親の年金と介護費用とお金の悩み

認知症の方の財産を守る成年後見人・保佐人・補助人3類型とその違い

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『成年後見制度』は、認知症になった本人を守るための制度です。そのご家族や配偶者のためにあるわけではありません。

そのため、『成年後見制度』を利用したからといって、認知症の親の財産を自由にすることができる制度ではないということです。

そこで今回は、認知症の方の財産を守る成年後見人・保佐人・補助人3類型とその違いについてご紹介します。

Contents

原則、契約は守らなければならない

契約は守らなければなりません。それが法律で決められた社会のルールです。守らなくて良いのであれば、無秩序な社会になって、世界は混乱してしまいます。

例えば、住宅ローンや車のローン、スマホの基本料金など、契約した相手企業に、毎月お支払いをしているかと思います。

その契約を守らなくて良い世の中であったらどうなるでしょうか。お金を支払わなくて良いのは助かるかもしれません。

しかし、雇用契約によって毎月決められた収入も、銀行に振り込まれなくなります。家、車、スマホの品質も、約束とは異なるひどい品質のものでも構わないでしょう。

そのような無秩序な世界では、誰もが得しません。ですから契約は、原則、守らなければならないのです。

制限行為能力者(認知症の方など)は例外的に取り消しできる成年後見制度

親が認知症になってしまったとします。車の運転を継続することが困難かつ危険なので、運転免許証を自主的に返納しました。

すでに判断力が十分ではない状態ですが、自分では若い時と同じような心身状態であることに疑いがありません。

運転免許証の返納とともに、車は廃車してあります。ですがある日、車を廃車したことすら忘れ、車がないことを不便だと、車の購入手続に行ったのです。

車は500万円。運転免許証はすでにありませんが、現金で購入たので、車を買う契約に免許証が必要ありませんでした。

車屋の言う通りに、なぜか、実印と印鑑証明書、車庫証明書などもしっかり準備できていました。すでに500万はお支払い済み。

さて、このような契約ですら成立してしまうのであれば、世の中はどうなってしまうのでしょうか。認知症の方が行った契約にもかかわらず、「契約は守らなければならない」という融通の利かない法律です。

相手がどんな状態にあろうと、車の購入契約が成立。500万円は戻らないのだとしたら、どの会社も、高齢者、若しくは認知症の方に製品を販売しようとしたり、騙そうとする人が増加してしまいます。

そこで民法は、認知症の方のような判断力が不十分な人を「制限行為能力者」として、契約を自由に取り消す権利を、例外的に与えて保護しています。

大人の制限行為能力者には3種類ある

判断が十分ではない「制限行為能力者」には、4種類あります。①未成年者、②成年被後見人、③被保佐人、④被補助人の4種類。

そのうち、大人の「制限行為能力者」は、①成年被後見人、②被保佐人、③被補助人の3種類です。

成年被後見人

主治医が作成する「診断書」と「診断書付票」をもとに、家庭裁判所は、認知症である方を守るため、『成年被後見人』の審判を出します。

『成年被後見人』と審判された場合、その認知症の方には判断力が全くないので、守らなければならない人であることを、主治医からも国からも認められたということになります。

それと同時に『成年被後見人』には、『成年後見人』と呼ばれる保護者がつけられます。『成年後見人』は、「法定代理人」と呼ばれ、法律によりその方の代理権を与えられた人をいいます。

『成年後見人』の同意を得て車を買っても取消できる

例えば、未成年者がスマホの契約をする場合、「法定代理人」である親の「同意書」があれば、契約することができます。

「同意書」があるので、この契約は取り消すことができません。言い方を変えると、未成年者の法定代理人である親には、同意する権利である「同意権」が与えられているということです。

しかし『成年被後見人』の場合、『成年後見人』の同意書を持って車の購入をしても、この契約を取り消すことができます。

判断力が全くない『成年被後見人』なので、契約行為そのものの意味を理解せず、契約しているからです。

例えば、10万円の車椅子の購入であれば、必要ですし、価格にも納得なので、『成年後見人』が『成年被後見人』に「同意書」を渡したとします。

10万円の車椅子だったからこそ「同意」したにもかかわらず、100万円で購入するという契約を結ばれていたとします。

未成年者であれば、この違いがおかしいと判断することができます。しかし、判断力が全くない認知症の方であれば、それをおかしいと判断することはできません。

それにもかかわらず、「同意書」があるのでこの契約は取り消すことができませんとするならば、あまりにも酷すぎます。

そのため『成年被後見人』の契約は、『成年後見人』の同意があっても取り消すことが可能となります。

これについて言い方を変えると、『成年後見人』には、未成年者の親のように「同意権」が与えられていないということです。

ここで困るのは、医療の現場でこまめに交わされる「同意書」についてです。本人である『成年被後見人』は、同意することなどできませんし、『成年後見人』が同意することもできません。

日用品の購入は『成年被後見人』一人でもでき、取り消しできない

『成年後見制度』は、判断力が不十分な人を守るためにあります。『成年被後見人』の財産などの権利を守るためには、さまざまな契約行為に例外を設け、取り消すことができるようにしているのです。

しかし、すべての契約を取り消すことができるようにしてしまっては、日用品を販売しているスーパーやドラッグストア、コンビニなどは、安心して『成年被後見人』と売買契約することができません。

わかりやすくいうと、取り消しされてしまうと困るので、『成年被後見人』には商品を売らないといった決まりを、スーパーなどに作られてしまう可能性もあるのです。

このような状態では、『成年被後見人』を守るためにある制度にもかかわらず、生きることすら危うくなってしまいます。

そこで日用品の購入など、日常生活上の契約だけに関しては、『成年被後見人』一人でもできるようになっています。取り消しできないので、スーパーなども安心して日用品の販売をすることができます。

取り消すことができるのは『成年被後見人』と『成年後見人』

『成年被後見人』が、500万円で買ってしまった車の契約を取り消すことができるのは、本人である『成年被後見人』と、その法定代理人(保護者)である『成年後見人』です。ご家族や夫婦であっても、『成年後見人』でなければ取り消すことはできません。

『成年後見人』が事後承認(追認)した場合は取り消しできなくなる

『成年被後見人』が、500万円で車を購入しました。車屋からその旨『成年後見人』に連絡、もしくは納車の時に知ったとします。

知った時に『成年後見人』が、「500万円で車を購入したのですね。わかりました。いい車ですね。」などと行って、事後承認(追認)をすると、取り消すことができなくなります。

あらかじめ同意した場合には、50万円の価値しかない車を、500万円で購入させられた恐れがあるので、取り消すことができます。

しかし事後承認の場合、500万円で購入した車を、判断力が十分にある『成年後見人』も500万円の価値があって、『成年被後見人』に必要だと判断しているのだから、取り消しできないという理屈です。

『成年後見人』は『成年被後見人』の様々な契約を代理する

『成年被後見人』になると、判断力が全くない状態ですので、自分一人で契約することができません。騙されてしまう恐れがあるからです。

例えば、自分の預金を引き出すこともできませんし、介護施設への入所手続きなど介護保険サービスの利用契約を結ぶこともできません。

生活、治療、療養、介護に関する契約もできませんので、入院することもできません。生命保険金を受け取ることもできません。

認知症の状態では一人暮らしできないからと、自分の家に引っ越して、今まで親が暮らしていた家を売ろうと考えても、その契約もできない状態です。

判断力が全くない『成年被後見人』に代わり、契約することのできる人は、法律により代理人であると認められた『成年被後見人』だけになります。

被保佐人

主治医が作成する「診断書」と「診断書付票」をもとに、家庭裁判所は、認知症である方を守るため、『被保佐人』と審判します。

『被保佐人』と審判された場合、その認知症の方には判断力が著しく不十分で、守らなければならない人であることを、主治医からも国からも認められたということになります。

それと同時に、『被保佐人』には、『保佐人』と呼ばれる保護者がつけられます。

判断力が全くない状態と審判を受けたのが『成年被後見人』であるのに対し、判断能力は著しく不十分だけど、判断力はまだあると審判を受けた方が『被保佐人』といった違いがあります。

『被保佐人』は、大きなお金が絡む重要な契約以外は1人で契約できる

『成年被後見人』は、最も守らなければならない状態にあるので、法定代理人である『成年後見人』に「同意権」を与えていません。

それに対して『被保佐人』の場合、『保佐人』が同意した通りの契約をすることができると判断されています。

そのため、『保佐人』には「同意権」が与えられています。この点『保佐人』の権限は、『成年後見人』の権限と異なります。

また『被保佐人』の場合、判断力が残っているとの医師の診断と、審判を受けているので、ほとんどのことを、「同意書」がない状態でも、自分一人で契約することができます。1人でできない契約は、大きな損をしてしまう恐れのある、多額の契約に関してのみ。

例えば、貸したお金を『被保佐人』1人で返してもらうことはできませんし、お金を貸す契約をすることもできません。

なぜなら、利息などの計算もしなければならない難しい契約なのに、判断力が著しく不十分な状態では、『被保佐人』が騙されてしまう恐れがあるからです。

同じ理由から、以下の契約行為を1人で行うことができないように守られています。

  • お金の貸し借り
  • 貸したお金を返してもらう
  • 保証人になること
  • 不動産や高額商品などの重要な財産の購入や売却
  • 訴訟
  • 財産をあげたり、もらうことの拒否
  • 揉めている相手と和解
  • 相続の承認や放棄
  • 遺産分割
  • 新築、改築、増築、大きな修理
  • 5年を超える土地の賃貸借契約
  • 3年を超える建物の賃貸借契約

上記記載の、『被保佐人』が騙されて、大きな損をしてしまいそうな契約は、『被保佐人』一人ですることができません。どうしても契約したい場合には、『保佐人』の同意が必要になります。

もし、『保佐人』の同意なく、『被保佐人』一人で上記の契約をしてしまった場合には、その契約を取り消すことができます。

『被保佐人』一人でできない契約はカスタマイズできるので人により異なる場合がある

家庭裁判所に、上記記載の多額の契約以外の契約についても、『保佐人』の同意を得なければ、『被保佐人』一人で契約することができない行為だと、審判をもらうこともできます。

そのため、『被保佐人』一人で契約することができない契約行為は、基本的に決められた契約以外については、人により異なる場合があります。

取り消すことができるのは『被保佐人』と『保佐人』

『被保佐人』が、500万円で買ってしまった車の契約を取り消すことができるのは、本人である『被保佐人』と、その法定代理人(保護者)である『保佐人』です。ご家族や夫婦であっても、『保佐人』でなければ取り消しできません。

『保佐人』が事後承認(追認)した場合は取り消しできなくなる

『被保佐人』が、500万円で購入した車について、『保佐人』が追認(事後承認)した場合には、契約が成立し、取り消しできなくなります。

『保佐人』は『被保佐人』の契約を代理しない

「代理権」についても、『成年後見人』と異なります。『保佐人』には、『被保佐人』の契約について代理しません。

法律により代理人であると認められた『成年後見人』や子供の親と異なり、『保佐人』は法定代理人ではないのです。

しかし、『保佐人』に代理権が全くないのでは、不便なこともあります。そこで、本人である『被保佐人』の同意がある場合に限り、範囲を限定した上で、家庭裁判所が『保佐人』に代理権を与えることができることになっています。

『保佐人』に与えられている権利は、「同意権」「追認権」「取消権」の3つのみ。『成年後見人』に与えられる権利が「代理権」「追認権」「取消権」の3種ですから、権利の大きさがだいぶ異なります。

被補助人

本人の同意と、主治医が作成する「診断書」と「診断書付票」をもとに、家庭裁判所は、認知症である方を守るため、『被補助人』と審判します。

『被補助人』と審判された場合、その認知症の方には判断力が不十分で、守らなければならない人であることを、主治医からも国からも認められたということになります。

それと同時に、『被補助人』には、『補助人』と呼ばれる保護者がつけられます。

判断力が全くない状態と審判を受けたのが『成年被後見人』、判断力が著しく不十分との審判を受けた方が『被保佐人』、判断力が不十分と審判された方が『被補助人』になります。

自ら申請するか同意しなければ『被補助人』の審判は出ない

『成年被後見人』と『被保佐人』と最も大きく異なる点は、『被補助人』になろうかという人が、自ら申し出るか、もしくは本人の同意なくして『被補助人』の審判が出ない点にあります。

『成年被後見人』は判断力がない方、『被保佐人』は判断力が著しく不十分な方になりますので、本人が、「法律に守らなければ騙されるかもしれない。」なんて判断をすることはできません。

そのため、『成年被後見人』『被保佐人』となろうかという人(本人)の同意がなくても、『成年被後見人』『被保佐人』の審判が出ます。

『被補助人』は、大きなお金が絡む重要な契約のうち、家庭裁判所が適切だと思う契約だけ1人でできない

『被保佐人』同様に、『被補助人』にも「同意権」が与えられています。ただし『補助人』は、『保佐人』よりも判断力がありますので、同意するべき契約行為が限定されています。

『被保佐人』の場合、下の箇条書きにある契約行為については全て、1人で行うことができないように守られています。そのため、下の契約には『保佐人』の同意が必須です。

それに対して『被補助人』の場合、下の箇条書きにある契約行為のうち、家庭裁判所が必要だと思う契約行為についてだけ、1人で行うことができないように守ります。

例えば家庭裁判所が、この方の場合はだいぶ判断力があるので、「相続の承認や放棄」についてのみ、『補助人』の同意を必須としましょうと、審判を出すのです。

  • お金の貸し借り
  • 貸したお金を返してもらう
  • 保証人になること
  • 不動産や高額商品などの重要な財産の購入や売却
  • 訴訟
  • 財産をあげたり、もらうことの拒否
  • 揉めている相手と和解
  • 相続の承認や放棄
  • 遺産分割
  • 新築、改築、増築、大きな修理
  • 5年を超える土地の賃貸借契約
  • 3年を超える建物の賃貸借契約

もし、『補助人』の同意なく、家庭裁判所にて審判が出された契約行為を1人で行った場合には、その契約を取り消すことが可能となります。

取り消すことができるのは『被補助人』と『補助人』

家庭裁判所にて審判が出された契約行為にだけ限定されますが、『被補助人』と『補助人』に取り消すことができる権利が与えられています。ご家族や夫婦には、取消権が与えられていません。

『補助人』が事後承認(追認)した場合は取り消しできなくなる

家庭裁判所にて審判が出された契約行為について、『補助人』が追認(事後承認)した場合には、契約が成立し、取り消しできなくなります。

『補助人』は『被補助人』の契約を代理しない

『補助人』は『被補助人』の契約について代理しません。法律により代理人であると認められた『成年後見人』や子供の親と異なり、『補助人』は法定代理人ではないのです。『補助人』に与えられている権利は、「同意権」「追認権」「取消権」の3つのみ。

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親の介護の期間が長くなればなるほど重くのしかかってくるのが費用の問題。

最初は親孝行の意を込めて快く費用を負担できても、長生きすればどんどん金額が積み上がっていくのが現実。

自分たちの生活もあるので、親の介護費用を援助し続けるには限界があります。

そのため、親の介護費用は基本的にまず親の財産を使っていくことが、お互いのため。

だからこそ、すぐに売る売らないは別にして、
あなたの実家・親の持ち家の価値を知っておく(一度、査定をしておく)ことで、介護費用にあてられる金銭の目処が立ちます。

実家終いノート編集部
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  • この記事を書いた人

孝行(たかゆき)

40代男性。有料老人ホーム、訪問介護、グループホームに勤務経験があり介護の現場に詳しい。主任やユニットリーダー兼計画作成担当者も経験。介護事業新規立ち上げ手伝い中。旧サイト名「フィリアル(親孝行)」部分の記事を主に執筆。

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