まだ先まだ先とは思っていても、親の万が一はある日突然やって来ます。いざ親御さんが救急搬送されてから焦らないように、前もって備えておくことが重要です。今回は入院手続きに必要な人・金・物・情報についてご紹介します。
介護サマリーのテンプレートも用意して有ります。
介護サマリーをダウンロードできます(pdf)
Contents
人:「連帯保証人」「身元保証人(身元引受人)」
「連帯保証人」
「連帯保証人」はよく聞く言葉ですので皆さんご存知かもしれません。入院することで発生する病院にお支払いすべきお金は、入院した親御さんが支払わなければなりません。親子であっても、病院側は子には請求できず、入院した親御さんにしか請求できないのです。
しかしこれでは、親御さんが意識不明のままであったり、お金がなっかたりした場合、病院側はお金を支払ってもらえずに困ってしまいます。
そこで、病院側はその入院している親御さん以外にも入院費用を支払ってもらえる状況を作ろうとします。それが「連帯保証人」です。「連帯保証人」として署名と実印を捺印し、印鑑証明書の提出を血縁者に求めるのです。
病院側と「連帯保証人」が直接契約することで、「連帯保証人」にも親御さんと同じ義務が生じます。わかりやすくいうと、病院側は直接「連帯保証人」に入院費用を請求できるということ。
「身元保証人(身元引受人)」
「身元保証人(身元引受人)」とは、入院した親御さんの義務の全てを保証する人のことをいいます。「連帯保証人」が、入院費用だけを保証するのに比べ、「身元保証人(身元引受人)」は、入院費用の支払い、親御さんの身柄の引き取りと居室の明け渡し、遺体・遺品の引き取り、緊急の連絡先、入院計画書・ケアプランの同意、医療行為の同意などなど、入院している間に起こりうる全ての義務を背負うことになります。
「連帯保証人」と「身元保証人(身元引受人)」の違い
「なら、身元保証人がいれば連帯保証人がいらないんじゃないの。」って気がつかれた方もいらっしゃると思います。ですが、「連帯保証人」と「身元保証人(身元引受人)」両方を立てる理由があるのです。
例えば、病院が「身元保証人(身元引受人)」に直接入院費用の請求をしたとします。この請求に対し「身元保証人(身元引受人)」は、「先に親に請求してください。」と言うことができます。親御さんがどうしても支払いできないときに代わりに支払うのが「身元保証人(身元引受人)」です。
「連帯保証人」の場合はどうでしょうか。責任の範囲は、「身元保証人(身元引受人)」に比べ、明らかに狭い範囲です。ですが、実のところ「連帯保証人」の方が重い契約内容。なぜなら入院した親御さんとまったく同じ責任を負うからです。もし病院側に直接支払いの請求をされても、「連帯保証人」は「先に親に請求してください。」ということができません。
「身元保証人」は責任の範囲が広いけど、責任の中心は入院した親御さん。「連帯保証人」は入院費用に関してのみの責任に限定されているけど責任は重く、責任を負う人が親御さんと「連帯保証人」と2人に増加。このような違いがあります。
入院する病院によって、「連帯保証人」「身元保証人(身元引受人)」両方を求める病院、どちらか一方のみ求める病院、どちらも求めてこない病院とあります。どちらも求めてこない病院は国や市が運営していたり、よほど大きな病院だったりして稀です。
また、「連帯保証人」「身元保証人(身元引受人)」を記入する用紙の名前も、「入院証書」であったり、「入院保証書」であったりまちまちです。ですが、記入する場所に「連帯保証人」「身元保証人(身元引受人)」と記載されていますので、記入することで生じる責任をしっかり理解した上で署名捺印しましょう。
きょうだいがいる場合、「連帯保証人」「身元保証人(身元引受人)」に誰が署名するか、あらかじめ決めておくと良いでしょう。「緊急連絡先」はまた別に記入できるようになっている病院もありますが、基本的には同じ人が署名することになるかと思います。
署名した場合、署名した家族が全ての責任を負うことになります。容態が急変した時など、度々電話で呼び出されることにも。これが理由で、きょうだい間で揉め事に発展してしまうこともあるかと思いますので、あらかじめ話し合っておく方が無難です。
金:入院保証金 10万円
病院によっては、入院手続き時に「入院保証金」を求められることもあります。「連帯保証人」「身元保証人(身元引受人)」がいれば「入院保証金」はいらないって病院もあれば、「連帯保証人」「身元保証人(身元引受人)」も「入院保証金」も両方必要ですって病院もあります。もちろん、「連帯保証人」「身元保証人(身元引受人)」も「入院保証金」も何もいりませんて病院もありますが、救急搬送される病院を選ぶことはできません。
入院保証金の金額は、10万円が相場。病院によってクレジットカード払いができないところもあります。退院するときに、入院費用から「入院保証金」10万円を引いた差額だけが請求されるので損をするわけではありませんが、いつ親御さんが救急搬送され、いつ「入院保証金」が必要になるかの予想がつきません。あらかじめ用意しておく必要があります。
この「入院保証金」もまた、「連帯保証人」「身元保証人(身元引受人)」と同様に、きょうだい間であらかじめ誰が支払うのかを決めておいた方が無難です。親御さんの入院ってだけで、心身ともにすり減ります。できる限り親族間のトラブルは避けたいところです。
物:親専用の入院セット
親御さんと一緒に暮らしている方であっても、「入院セット」があらかじめ用意されていると安心です。親御さんと住んでいる場所が別であるならなおのこと。病院から求められる入院時に必要な物は、ほとんど同じようなものです。あらかじめ用意しておけば、そのときになって焦ることもありませんし、探さなくて済みます。
- 診察券のコピー
- 健康保険証のコピー(74歳未満の方)
- 高齢受給者証のコピー(70〜74歳の方)
- 後期高齢者医療被保険者証のコピー(75歳以上の方)
- 介護保険証のコピー(既に持っている方のみ)
- 各種医療受給者証のコピー(持っている方のみ)
- 寝衣、着替え、下着
- 歯ブラシ、コップ、石鹸、ひげそり、洗髪用具(シャンプーやコンディショナー)
- はし、ストロー付きのコップ、スプーン
- ティッシュ、スリッパ、タオル
- 筆記用具
- イヤホン(テレビ用)
- サマリー
- 退院証明書(前回の入院から3ヶ月未満の場合に必要)
- お薬手帳と服用中の薬
上に書き出した物をあらかじめ専用のバッグに詰めておきます。そうすれば、いざそのときに焦ることはありません。一番下に記載した「お薬手帳」と「服用中の薬」だけバッグに入れて、もっていくだけ。
他には、病院側から記入し提出するよう求められる「入院申込書」や「入院保証書」、印鑑や印鑑証明書、現金またはクレジットカードなどを用意する必要があります。
情報:サマリーと合鍵
サマリー
サマリーとは、親御さんの基本情報、病名・現病歴・既往歴と通院先(かかりつけ医)または当時の入院先、日常生活動作(食事・更衣・移動・排泄・整容・入浴など生活を営む上で不可欠な基本的行動がどの程度できるか)など、親御さんの情報をまとめたものをいいます。
病歴や飲んでいる薬など、これからの治療を左右する大切な情報などもありますので、その場で聞かれて困らないよう、あらかじめ記入して準備しておきます。
ある程度の情報をあらかじめ記入しておけば、実際に親御さんが入院するとき、追加情報だけ記入すれば足ります。また、病院側が用意する書式にも、親御さんの情報を記入しなければなりませんので、コピーして2枚用意しておくと、それを見ながら記入できます。
介護施設からの入院、他の病院からの転院であれば、施設側や病院側がサマリーを用意してくれます。しかし、あらかじめ親御さんの情報をしっかりまとめていない施設や病院もありますので、どちらにしろ準備をしておいて損はありません。
合鍵
親御さんと同居していない場合必要になるのが合鍵の情報です。親御さんが夫婦で暮らしている場合、どちらかが鍵を持っているでしょうから、困ることはあまりないかもしれません。しかし、親御さんがもし一人で暮らしているのであれば、あらかじめ合鍵のことを親御さんと話し合っておかなければなりません。
合鍵がなければ、救急搬送後に家族が家には入れない、または家の鍵をしめられなくて困ってしまうからです。救急搬送されてすぐ意識を取り戻せていたらいいのですが、そうとは限りません
いかがでしたか。今回は入院手続きに必要な人・金・物・情報についてご説明しました。これで親御さんの救急搬送という、いざってときに焦ることなく、親族ともめることを避け、心の準備をした上でその時を迎えることができるでしょう。ぜひ参考にしてみてくださいね。