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年々増加する救急自動車による救急出動件数及び搬送人員数
出典:『平成 28-29 年版 救急・救助の現況』総務省消防庁
平成8年の頃と比較すると、たった20年の間でおおよそ2倍もの救急出動件数に増加しています。毎年10〜20万づつ増加し続け、綺麗な右肩上がりができています。平成28年度においては、救急自動車は5.1 秒に1回の割合で出動し、国民の23 人に1人が搬送されたことになるそうです。
事故種別の搬送人員の構成比を見ると、急病と一般負傷だけが増加している
出典:『平成 28-29 年版 救急・救助の現況』総務省消防庁
一般負傷とは、火災、自然災害、水難事故、交通事故、労災事故、運動競技、加害事故、自傷行為、急病医分類されない、不慮の事故をいいます。
歩行中の転倒や階段からの落下など、比較的高齢者が起こしやすい事故といえます。交通事故は徐々に減少傾向にありますが、急病の割合は明らかに増加しています。一般負傷の徐々に増加しているので、高齢者の搬送割合が増加していることが推測されます。
年齢区分別の搬送人員をみると、高齢者の搬送割合だけ年々増加して今では半数を超える
出典:『平成 28-29 年版 救急・救助の現況』総務省消防庁
年齢区分別の搬送人員数と構成比を見ると、新生児、乳幼児、少年、成人割合に関しては減少傾向、もしくは横ばいですが、高齢者の割合だけが急激に上昇していることがわかります。急病と一般負傷はやはり、高齢者に発生しがちな病気及び事故であるようです。
人数にするとおおよそ10万人づつ増加しています。最初の時点で毎年10〜20万づつ救急出動件数が増加していることがわかっていますが、この10〜20万づつの増加はほぼ全て高齢者。高齢者の増加数と、救急出動件数はほぼ一致。これから先も増加が続きますので、救急隊など医療関係者の負担は増加していきます。
救急搬送の約半数が軽傷患者
出典:『平成 28-29 年版 救急・救助の現況』総務省消防庁
横ばいとなっておりますが、入院を必要としない軽傷患者が約半数です。軽傷か中等傷かの判断を現場でするのは難しいとはいえ、結果的に、半数が介護タクシーのような活用をされているようです。
入院が必要な中等症患者の救急搬送数は上昇傾向。中等症患者の引受先である二次救急病院の整備が必要でしょうが、医療費を抑制している現状ではとても難しそうです。
命に関わる重症患者の搬送数は年々減少傾向。軽傷患者および中等傷患者の引受先がなく、最後の砦である三次救急病院にしわ寄せがいってしまう現在は、おおよそ10%の人が優先して救急救命される仕組みづくりが行われています。
右肩上がりの救急出動件数に追いつかない救急隊数及び救急隊員数
出典:『消防防災の組織と活動 -救急隊数及び救急隊員数-』総務省消防庁
上の表は「救急隊数の推移」です。救急隊員の推移ではありません。消防隊員の中でも、最低135時間の救急業務に関する講習(旧救急I課程)を修了し、救急隊員の資格を取得した人だけが救急隊員になることができます。
隊長・隊員と機関員の3名で一隊が構成。人命を救うという重要な任務に従事するからとはいえ、一隊を増やすことがとても難しく、なかなか増やすことができない職業といえます。しかも、いつ出動命令が出るかもわからず、気の休まる暇もありません。
また、「たらい回し」の問題や病院側との関係、救急車内の人間関係など、大変なのは仕事だけではなさそうです。
救急隊は、平成11年から17年間で、約500隊しか増加していません。毎年20〜40隊づつ増加しているでしょうか。救急出動件数は毎年10〜20万づつ増加し続けていますので、毎年現場が厳しいものになっていることがわかります。
単純に計算すると、平成11年度においては、1隊の救急出動件数は年間約850回。1日におおよそ3回出動。平成28年度においては、1隊の救急出動件数は年間約1,200回。1日におおよそ5回出動していることになります。
平成11年度であればそこまで大きな負担はなかったかもしれませんが、平成28年度においては、いつ休憩しているのでしょうか。消防も救急も両方できなければならず、これだけ過酷な現場では、救急隊員の増員は難しそうです。
現在は、消防機関以外の救命救急士の活用、救急車の適性利用、重度傷病者を確実に搬送する仕組み(ER型救急システムなど)、搬送時間延伸の要因の解決(各都道府県の独自ルールなど)、救急隊の編成基準の見直しなどの対策が取られているようです。
火事の現場における救命救急を考えると一概に正しいとは言えませんが、超高齢化社会にある日本において、医師に専門医があるのと同様、消防と救急を完全に分離してしまうようなシステム変更も必要に感じます。