排尿の仕組みの基本事項を7つに分けてまとめました。このページでのゴールは、介護従事者やご家族に、排尿の異常を判断する「ものさし」となる指標を知ってもらうことにあります。排尿の「自立支援」や「排泄介助の数を減らす」糸口となれたなら幸いです。
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膀胱とは300〜500mlの尿をためることのできる袋
膀胱とは、排尿と蓄尿を行う役目を持った袋状の臓器をいいます。通常は300〜500mlの尿をためることができます。
尿がたまっているときは膀胱がたるむので膀胱そのものに傷がつきにくい仕組み。また、たまった尿が漏れてしまわないよう、膀胱の出口と尿道の2つに内尿道括約筋と外尿道括約筋と呼ばれる「栓」のような役割が備えられています。
膀胱、尿道、内尿道括約筋は「平滑筋」から構成され、外尿道括約筋だけは「骨格筋」から構成されます。「平滑筋」は内臓を動かすための筋肉。つまり自分の意思では動かすことはできません。「骨格筋」は体を動かすための筋肉。つまり自分の意思で動かすことができます。この違いがポイント。
男性と女性の尿道は全然違う
男性の尿道は約20cm。膀胱付近にある尿道の始まりの部分には、それを包み込むように前立腺があります。この前立腺は男性特有の臓器で精液の一部をつくる働きをします。前立腺が腫れてしまうと前立腺肥大となり、排尿障害の発生リスクが増します。
対して女性の尿道は約5cmしかありません。男性の尿道の4分の1程度。前立腺はありません。これらの違いが尿もれや排尿障害などに様々な影響を与えます。つまり、尿をためておく機能が高ければ尿もれしにくいということになります。
尿もれに必要な要素は「内尿道括約筋」「外尿道括約筋」「前立腺」「尿道」「骨盤底筋群」の5つ。男性の場合「前立腺」があることと「外尿道括約筋」が強いこと。そして尿の通り道の途中、90度以上に折れ曲がっていることから、女性と比較して尿が漏れづらい構造です。しかし複雑で距離が長い分、排尿障害が起こりやすいというデメリットがあります。
女性の場合「前立腺」がなく「外尿道括約筋」が弱いこと。尿道が一直線にほぼ真下を向いていることや距離の短さから尿もれしやすい構造です。しかし男性に比較するととてもシンプルなので、排尿障害が起こりにくいというメリットがあります。
腹圧性尿失禁を防ぐ「骨盤底筋群」
「骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)」とは、骨盤の底の穴を埋めるように存在する複数の筋肉群の総称です。自分の意思で動かすことのできる「骨格筋」の一つでもあります。
膀胱、子宮、直腸などの内臓を支える役割がありますので、加齢や出産、肥満を理由に弱ってくると、膀胱、子宮、直腸が変動。腹圧性尿失禁の原因となります。
尿意を感じて、意識的に排尿しようとしてから排尿される
膀胱の最大容量に近い尿がたまると尿意を感じます。ただしこの時点では尿は排出されません。意識的に排尿を開始しようと思わない限り脳が排尿を抑制する仕組みです。
脳が指示を出さなければ「内尿道括約筋」や「外尿道括約筋」といった「栓」も閉まったまま。トイレに行き、下着を下ろし、排尿しようとならない限り、排尿の抑制が解除されないのです。
1回の排尿量200〜300ml、日中3〜8回、夜間0〜1回
1回の排尿量は200〜300ml。日中3〜8回の排尿があり、夜間おおよそ8時間の間0回の排尿が正常です。高齢者であれば、夜間1回くらいの排尿であれば正常の範囲内と言われています。
水分量などによって変動はありますが、成人であれば1日1,200〜1,500mlの尿量が正常です。100ml以下で「無尿」、500ml以下で「乏尿」、3,000ml越えで「多尿」、日中9回以上、夜間1もしくは2回以上で「頻尿」と呼ばれます。
正常な尿の色は無色から黄色かつ透明
正常な尿の色は無色から黄色、それでいて透明です。それ以外の色や濁りがある場合には何らかの原因があります。食事や服薬中の薬によって色などが変わるので、一概に病気だと言い切ることはできません。しかし無色から黄色で、透明でなければ、上司や医師に報告したり、他の職員と情報を共有する必要があるでしょう。
においでの判断は、急変した時
尿のにおいは色と異なり、はっきり「こうだ!」といえるものがなく、一概にどのにおいが病気の可能性といえません。つまり判断がとても難しいのです。病気を理由ににおいが変わることも稀。
食事や服薬中の薬によってもにおいが変わりますし、尿路感染している場合のにおいはアンモニア臭が強くなるだけ。大腸菌などが感染したのであれば腐ったようなにおいがすることもあるので、アンモニア臭と異なり発見が比較的容易といえます。
このように色と違い、においの場合には一概に何が悪いということができません。いつもと違ったにおいに変化した場合に、報告するといった対応になると思います。