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ケアプラン第2表と第1表を連動させる
ケアプラン第2表『居宅(施設)サービス計画書(2)』は、第1表の「利用者および家族の生活に対する意向」に記載する利用者様本人の「人生の目的地」に到達するために作られます。
「利用者および家族の生活に対する意向」は利用者様の人生における目的地であり理想。理想から現状を引いて、そのギャップが課題になります。つまり、理想から現状を引くことで割り出された課題がそのまま、ケアプラン第2表における「課題(ニーズ)」になります。
例えば、「残りの人生、できる限り外出して楽しく暮らしたい」という、ご本人様からの生活に対する意向を、はっきり聞いており、実際に第1表の「利用者および家族の生活に対する意向」にそれが記載されているとします。つまり利用者様が望む理想の未来。
しかし実際には半年に一度、お買い物や公園へのお散歩ができていない状況だとします。これが現状であり現実。ここから理想に近づけるため、現時点のスタッフで可能な範囲で、利用者様の身体レベルと日・週・月・3カ月単位のスケジュールを組むことになります。
「外出」や「楽しく」を細かく細分化する
あなたは幸せになりたいと思いますか? 幸せになりたいという気持ちはニーズですが最終地点です。つまりは第1表の「利用者および家族の生活に対する意向」に記載すべき内容であり、あなたの未来・ビジョンです。
ですから第2表の「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」に「幸せになりたい」「外出したい」「楽しく暮らしたい」と記載してはいけません。利用者様が目指す最終の目的地である「利用者および家族の生活に対する意向」と同じ内容を「課題(ニーズ)」に記載すると、必要な目標が抽出されなくなるからです。
実際に体験していただくとわかります。あなたは幸せになりたいはずです。その目標を書き出してみてください。目標とは、どうでしょうか? 3~4つまでは目標を書くことができたでしょうが、それ以上となるとなかなか思いつかないのではないでしょうか? 自分にとっての「幸せ」とはなんなのかを考えるステップを飛ばしてしまったが故、具体的な目標が思いつかないのです。
あなたにとっての「幸せ」を、「仕事の成功」「理想の旦那」「素敵な家」「おしゃれな車」「愛らしい子供」「定期的な楽しい旅行・外出」「両親の笑顔と健康」といった7つの「夢」に細分化してみたらどうでしょう? 理想とする未来である幸せに対して思い描く、今現在に足りない要素が7つ思い付き、すべてが揃ったら幸せだろうなと思えますでしょうか?
7つの夢を達成出来たら一区切りになります。また理想とする未来(幸せ)に、今現在足りない課題でもあります。つまり「仕事の成功」「理想の旦那」「素敵な家」「おしゃれな車」「愛らしい子供」「定期的な楽しい旅行・外出」「両親の笑顔と健康」7つの「夢」はそのまま「課題(ニーズ)」に記載できるゴールとなります。7つのゴールを達成出来たら幸せを感じられるのです。
それと同じように「外出」や「楽しく」も細分化します。「外出」するために必要な事と物などを割り出していきます。例えば「1時間歩くことのできる体力と筋力が欲しい」「公園に散歩したい」「近所でお買い物したい」「外食したい」といった内容が「課題(ニーズ)」になります。
理想的には、利用者様本人に確認するのが一番間違いがありません。「1時間以内に帰ってこれる希望のお出かけは何ですか?」と聞いてみるのです。思いつかないようでしたら、散歩や近所のお買い物、外食などを提案してみて反応を観察します。
「あぁ! それができたらいいねー」といったような発言や好印象を得られたら、間違いなくそれは利用者様ご本人の「課題(ニーズ)」。自信をもって「課題(ニーズ)」に記載できます。
「利用者および家族の生活に対する意向」と関係ない課題(ニーズ)はニーズと呼べない
当たり前のことですが、第1表の「利用者および家族の生活に対する意向」と何の関係もない内容は「課題(ニーズ)」とは言えません。
例えば「幸せ」になりたいあなたにとって、お買い物だけでなく旅行にも活用できる「おしゃれな車」は必須アイテムだとしても、「クールなバイク」は不要だったとします。それにもかかわらず「課題(ニーズ)」に「クールなバイクが欲しい」と記載したら、それに関連してくる「目標」はどのような内容になるでしょうか?
「クールなバイクが欲しい」ので「目標」には「大型二輪の免許を取得する」「免許取得後は毎日バイクの運転をして慣れる」といった内容が記載されるでしょうか? さて、望んでもいない目標を達成するためにあなたはがんばることができるのでしょうか?
そもそも目指す最終の目的地「幸せ」とは、あなた自身が望む未来です。「幸せになりたい!」と思い、あなたが行動する理由になるもの、つまり原動力になります。そしてゴールとは、達成して嬉しくなる内容、つまり「成果報酬」になりえるものでなければなりません。
仕事で結果を残し、昇給&昇格したら嬉しい、理想の男性と結婚出来たら嬉しい、素敵な家を購入&暮らし続けることができたら嬉しい、おしゃれな車でお出かけ出来たら嬉しい、愛らしい子供に囲まれた生活ができたら嬉しい、定期的に楽しい旅行・外出ができたら嬉しい、両親の笑顔と健康を維持できたなら嬉しい。それら7つの夢の内1つが達成されるたびにうれしくなるような「成果報酬」でなければ頑張ることができないのです。
ですから第1表の「利用者および家族の生活に対する意向」と何の関係ない内容は「課題(ニーズ)」ではないのです。
「課題(ニーズ)」と「目標」の違い
ケアプラン第1表の「利用者および家族の生活に対する意向」を細分化したら「課題(ニーズ)」が抽出されました。そして今度は「課題(ニーズ)」を細分化&定量化すると「目標」が抽出されます。
「課題(ニーズ)」とは節目であり一区切りとなるゴールのような概念です。そのため「課題(ニーズ)」を達成すると、それに付随する多くの「目標」も一緒になくなります。
わかりやすい例は「理想の旦那」「素敵な家」「おしゃれな車」などの「課題(ニーズ)」です。例えば注文住宅を購入するための頭金がない状態とします。世帯年収が1,200万円として、月に30万円貯蓄して、頭金600万円を用意したいと考えます。この場合20カ月で600万円貯まりますので、結婚してから30万円貯めても1年と8カ月後には素敵な家を購入できることになります。
つまり月に30万円貯金するという目標は、取り敢えず家を購入した後からは継続する必要がなくなります。「課題(ニーズ)」が節目、一区切り、ゴールであるとはそいう意味になります。目標を一つ達成しても、その他の目標は継続する必要があります。一方「課題(ニーズ)」を達成すると、それに付随する目標すべてが不必要になる可能性があります。
ニーズは、人生におけるビジョン、つまり第1表の「利用者および家族の生活に対する意向」に到達するまでに必要なゴールであり、今現在足りない理想でした。一方目標は、「課題(ニーズ)」に迷わず到着できるようにする目印となる、わかりやすい指標のことです。
「課題(ニーズ)」は曖昧「目標」は具体的
第1表の「利用者および家族の生活に対する意向」には、利用者様の思い描く、理想の未来、つまりビジョンが記載されます。わかりやすい例として挙げた「外出して楽しく暮らしたい」も「幸せになりたい」も両方ともが曖昧です。
同じく「課題(ニーズ)」も曖昧です。素敵な家といっても、具体的な場所や金額は記載されていません。車に関しても同じ。つまり曖昧。
一方「目標」は「課題(ニーズ)」を定量化する方法が理想です。理由は、「目標」達成および「課題(ニーズ)」の達成する期間を推測でき、進捗状況を測定可能になるからです。
例えば1,000万円の車を購入したいとします。その場合月に10万円20カ月間貯蓄して、残り800万円を3年ローンで返済するといった計画を立てることができます。ですから目標は月に10万円貯蓄するになります。
先ほどの家の購入では月に30万円貯蓄すると計画を立てたので、月収およそ100万円のうち、合計40万円を貯蓄しなければなりませんが、結婚してから20カ月の辛抱なので、安いマンションなどに暮らして頑張ろうというモチベーションを維持できます。
4000万円の家を購入するとして35年ローンを組んだ場合、20カ月以降からはおおよそ8~10万円の住宅ローンの返済が舞っています。そして月10万円20カ月間貯めて200万円用意して頭金に、残り800万円をカーローン3年で組んだらおおよそ月20万円の返済が36か月間続きます。つまり月額40万円貯めていた結婚後20カ月から、約30万円ローン返済に充てる3年間に切り替わります。
3年経過後は、住宅ローンだけが残るので月額の返済額は約10万円に減ることになります。このように、具体的な計画を立てることができるようになる理由は、曖昧ではない、具体的な「目標」を立てたからにほかなりません。つまり「目標」は「課題(ニーズ)」と違い、定量化して具体的にすることが理想的です。
「1時間徒歩できる身体が欲しい」というニーズに関しても、「週に3回30分公園を散歩する」「毎日10回スクワットする」といったような、具体的な「目標」を立てると、達成を繰り返し、理想に近づけることが可能となります。
「目標」を立てるコツは客観的な評価ができることと修正が容易なこと
「目標」に掲げる内容は具体的であることが理想です。具体的だと計画を立てることができるからです。しかしそういわれても難しいと思うのでコツをご紹介します。コツは、「客観的な評価」と「目標・計画の修正が容易」にすることです。
「客観的な評価」とは、誰が見ても誰が計測しても、「目標」が達成していると評価される公平な内容でなければなりません。つまり、「毎日スクワット10回」とするよりも「足を肩幅に広げて立った状態から、膝が90度になるまで曲げる屈伸を毎日10回」とする方が、誰が計測しても同じような効果を得られます。
Aさんは評価がとても甘く、少しひざを曲げただけでも1回とカウントして、Bさんは厳しくお尻をかかとに付けたら1回とカウントするのでは、利用者様も困ってしまいます。何より1時間歩いても疲れない身体づくりという「課題(ニーズ)」の達成が遠ざかります。
「目標・計画の修正が容易」なこともコツの一つです。「足を肩幅に広げて立った状態から、膝が90度になるまで曲げる屈伸を毎日10回」という目標を立てたところ、1か月継続したらそれが容易に達成できるほどに筋力がつきました。そこで実際に1時間歩いてみましたが、40分歩いたところでばててしまい、2日後に筋肉痛になってしまったとします。
- 膝が90度曲がるまでではなく、100度に修正する
- 回数を10回から20回に増やす
- その他の筋トレを増やす
といった目標の修正が可能となります。「毎日スクワット10回」といった曖昧な「目標」では修正が容易ではありません。なぜなら、AさんとBさんのような計測の公平性も原因の一つに加わってしまうからです。「毎日スクワット20回」に修正したところで解決しません。つまり目標の修正が容易ではないのです。「毎日スクワット20回」に修正してもAさんのように評価基準が甘い人が多い限り、1時間歩いても疲れない身体は、なかなか出来上がりません。
「目標」と「サービス内容」などは、第1表の「総合的な援助の方針」に矛盾しないものにする
ケアプラン第1表では、「総合的な援助の方針」という、介護職員の行動方針も決めました。
このサイトでご紹介する『利用者様の目的地と介護職員の行動方針!『サービス計画書1』の作り方』ページでは、「安全に」「ゆっくり」「最適に」「経済的に」「賑やかに」「大雑把に」「確実に」「カジュアルに」という8つの行動方針で例えました。
第2表における「目標」と「サービス内容」「頻度」「期間」などは、上記8つの行動方針に、矛盾しない内容で考えます。
優先順位は、上に書いた順番とします。この場合、最も優先すべきは「安全に」ということになります。
そのため、もし外食に行くにしろ、いくら身体機能のリハビリになるとはいえ、「バリアフリー」ではないお店は対象外になるでしょう。「確実に」という行動方針が第一優先なのであれば、「バリア」があるお店を、リハビリのためあえて選択するのもアリだったかもしれません。
2番目の優先順位は「ゆっくり」です。そのため、「目標」の大きさは、ほんの少しの背伸びくらいの「目標」にとどめておきます。もちろん、「頻度」や「期間」も、ほんの少しの背伸びで済むような回数と期間に設定します。
「経済的に」といった行動方針もあるので、外食先は、ファミレスなどが良いでしょうか。このような形で、ケアプラン第1表「総合的な援助の方針」に矛盾しないように、「目標」と「サービス内容」「頻度」「期間」を決めていきます。