組織の管理と責任。意思決定が求められる管理職。中でも最も重要なお仕事は「人材育成」といえます。「人材育成」は、良い介護を提供できる組織運営に欠かせないものであり、売上にも直結します。それにもかかわらず、採用システムが検討されることもなく、採用された新しい職員を既存の従業員に丸投げされる方法がとられているところが少なくありません。
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日本国民の生活を支える現場の介護職員
介護職員の世間的評価は決して高いとはいえません。多くの現場において、会社からの扱いも良いとは言えないでしょう。しかし高齢者の生活を直接支えているのは、誰がなんと言おうとどんな評価を下されていようと現場の介護職員です。
介護職員がもし日本から誰もいなくなったら、多くの高齢者の生活はもちろんそのご家族の生活も立ち行かなくなります。ご家族がしっかり仕事に打ち込めなくなればその子供たちの生活も危うくなります。高齢者を支える介護職員は、すべての年代の生活を支えているといっても過言ではないのです。
介護職員のご家族は将来の利用者様
「自分も自分の両親も、うちの会社の介護サービスだけは使いたくない、もしくは使わせたくない」そう発言する介護職員は少なくないと思います。世の中にはさまざまな仕事が存在しますが、自社製品・サービスを使いたくないと、働いている職員から思われている職種は比較的珍しいと思います。
とはいえ誰もが憧れる生活の提供は介護サービスで提供されるべきものではありません。憧れる生活は、高価な介護保険外サービスで提供されるべきものです。
「使いたくない。使わせたくない」と思わせる理由は、憧れる生活ではないからではなく、利用者様の意思が尊重されていないからです。選択の自由が奪われているのです。人間扱いしていないと言われても仕方ありません。
「もし介護保険サービスを利用しなければならないのであれば、うちの介護保険サービスがいいよ」と、そこで働く介護職員に思ってもらうには、利用者様の意思の尊重と選択の自由が当たり前でなければなりません。
会社の理念や方針に従えない職員は採用しないほうがいい
求人媒体の利用頻度はどの程度でしょうか? 最近は求人を出しても、昔ほど多くの応募がありません。そのためせっかく応募してくれた人をできる限り採用しようとします。求人費を無駄にしたくありませんし、応募があったのに採用ゼロと決断できないからです。
しかし、会社の理念や方針に従えない職員は採用しないことをおすすめします。採用人数がゼロになったとしてもです。人が足りているのであれば、あえて冒険して「新しい風」なるものを求める選択肢もあるかもしれません。
もし人が足りていないのであれば、それこそ足場を固めるため「求める人物像を明確」にして、必要とする人材からの応募が見込める「採用手法」を選び、「採用システム」を構築する方が賢明です。
なぜなら、会社の理念や方針に従っている人の中に、従えない人が入り込むと、現場に混沌が生まれるからです。何が起きてもおかしくありません。職員同士険悪になり、逆に人が減ってしまうなんてこともあり得るのです。
介護職員が楽しくないと売上も顧客満足度も上がらない
内閣府の「高齢化の現状と将来像」によると、平成27(2015)年に3,392万人に及ぶ65歳以上の高齢者は、平成54(2042)年に3,878万人でピークを迎えます。0〜59歳の年代は減少していきますが65歳以上の高齢者は増えていくのです。それにもかかわらず介護保険サービスには「人員基準」が設けられています。
高齢者は増え続けるので、約20年の間は顧客の確保で困ることはなさそうです。それに反比例するように介護職員を確保することが難しくなっていきます。高齢者が高齢者を介護することが当たり前になります。
そのような状況下、顧客満足度を上げることは無理難題とも言えます。顧客満足度は、現場の介護職員の働きによって上昇させることができますが、介護職員が楽しいと思える職場でない限り、顧客満足度は上昇しません。
また介護職員辛い思いをし続けているとどんどん人が辞めていなくなりますので、法で定められた人員基準を満たすことができなくなります。つまり売上もさがります。従業員満足度は、顧客満足度と売り上げに直結しています。
精神的疲労を与え続ける会社は運営の継続が難しい
介護の仕事は肉体的疲労も精神的疲労も激しいものです。動かない無機物を持ち上げるのでなく、生きた人間を持ち上げなければならないお仕事。言い方に気をつけることなく率直に言うと、認知症の利用者様の介護はとても大変です。精神的に追い詰められている介護職員も少なくないはずです。
そのような大変なお仕事にもかかわらず、会社も介護職員に精神的疲労を蓄積させ続けていたのでは長く勤めることなんてできるはずもありません。利用者様の健康寿命と平均寿命の差を縮める努力も介護職員の仕事の一つですが、従業員満足度と勤続年数を上昇させる努力は、介護の会社を運営する立場の人たちの仕事です。
採用から始まる「人材育成」に関するシステムも、会社の評価や介護職員同士のあり方についても、全てが介護職員の精神的疲労を小さくする工夫がなければ、これからもっともっと介護保険サービス運営が厳しくなっていきます。