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サービス残業は違法!介護現場で知らずに強要される残業9の種類

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介護職員自らが行う「朝残業」。労働時間前や労働時間後に残業代が出ないのに、やって当然と思われがちな介護職員たちの間違った意識。

知らなければ「朝残業」や「サービス残業」を率先して行う介護職員も、「朝残業」や「サービス残業」を断る介護職員も、会社も、全員が不幸になり、退職者が増加します。

今回は、介護の現場で横行されがちなサービス残業についてご説明します。

サービス残業とは

サービス残業とは、労働基準法で定められた法定労働時間を超えて働いた場合や、法定休日に働いた場合に、その時間に応じた割増賃金(残業代)が支払われないケースのことをいいます。

法定労働時間とは

法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間のことをいいます。1日に8時間、1週で40時間が法定労働時間です。もし法定労働時間を超えて労働した場合、会社は職員に対して割増賃金をお支払いする義務が生じます。

お支払いしない場合には労働基準法違反となりますので「懲役」や「罰金」に処せられる可能性もあります。

残業代は1分単位 1ヶ月の合計では30分未満切り捨て、30分以上切り上げ

法定労働時間を超えた残業があった場合において、残業代を請求できる範囲についてです。会社によっては、1日単位の合計残業時間において、30分未満切り捨てたり、15分未満切り捨てたりしていますが、これらはすべて違法です。

もし法定労働時間を超えた残業があった場合、労働者は1分単位で残業代のお支払いを請求することができます。

ただし、1分単位での残業代のお支払いをするとなると会社が大変。そのため、残業代を1ヶ月単位で合計して、1時間未満の単数がある場合の例外規定が労働基準法に定められています。

労働基準法には、1ヶ月単位の合計残業時間において、30分未満の端数は切り捨てることができ、30分以上の単数は1時間に切り上げることができるとされています。1日単位での合計残業時間においては、30分未満切り捨てができませんが、1ヶ月単位の合計残業時間においては30分未満切り捨てが労働法違反にならないのです。

つまり、月に22日間働いて、毎日2分ずつ残業したら、1ヶ月単位の合計残業時間が44分になるので切り捨てることができず、1時間に切り上げることが推奨されるのです。

給与及び残業代に1円未満の端数がある場合、50銭未満の端数を切り捨てて、50銭以上を1円に切り上げなければならないという決まりもあります。また、1分の残業があった場合には30分の残業と切り上げるなどのように、労働者に有利な会社独自のルールの場合には「適法」となります。

サービス残業9つの種類

タイムカードを切ってから働かせる

介護の現場でよくある悪習慣ではないでしょうか。法定労働時間を過ぎたらすぐにタイムカードを切らせ、その後も働かせる方法です。

これも労働基準法違反です。しかも悪質だと判断されかねないケース。タイムカードはあくまでも就業時間を把握するためのツールでありただの手段。そのほかに、本当の労働時間を把握することのできる証拠があればなんの意味もありません。

例えばパソコンを使う職業についている方にとって、タイムカードを切ってから働かせても、パソコンのデータがタイムカードの代わりになります。つまり、タイムカードを切ってから働かされているパソコン業務の人は、パソコンを証拠にできるということになります。

法定労働時間を10分以上経過している場合に手書きさせる

これも介護の現場でよくある悪習慣の一つです。法定労働時間を5分以上、もしくは10分以上経過している場合には、タイムカードを切るのではなく手書きさせる方法です。

こうして残業代を支払わないようにしても立派な労働基準法違反。不正なく給与を支払っているように見せかけているので、やはり悪質だと判断されかねない方法です。

「残業は認めない」と心理的プレッシャーを与える

こちらも介護の現場でよくある悪習慣。「残業をしてはいけない」「残業は認めません」
「職員全員の残業時間が月に20時間を超えさせてはいけない」という取り決めを行い、もし残業をした場合、勝手に働いたと、残業代を支払わない言い訳に使う方法です。

これもかなり悪質だと言えるのではないでしょうか。介護職員不足が解消されていないのにもかかわらず、業務量の調整を行わず、介護職員の責任感と優しさに漬け込んで、日々のサービス残業があたかも当然かのように振舞っています。

管理者や先輩がたくさんサービス残業をして心理的にサービス残業をするように促す

これもよくある介護の会社の風景。役職者や先輩などが当たり前のように長時間のサービス残業を行い、サービス残業を拒否しづらい雰囲気作りをしている会社です。

サービス残業を行なっている役職者や先輩にその気が無くても、それが当たり前になっている会社においてはそういう雰囲気になっている可能性があります。

「私たちなんて毎日何時間もサービス残業してるのよ」なんて恥ずかしい発言はやめたほうが身のため。8時間の業務時間では仕事を終えることのできない無能ですと自ら宣伝しているようなものだからです。

「効率」重視といいながら8時間勤務時と10時間勤務時と得られる利益が変わっていないのであれば、サービス残業することで効率悪化をさせているだけ。8時間で同じ利益の方が高効率。つまり残業自慢をしている人たちは怠惰だということ。

長い時間働いているのが偉いと思っているのであればそれはただの勘違いです。短い時間であっても、利用者様に笑顔を作り、しっかり利益も稼いでいる人が優秀です。

15分単位で労働時間をカットして給与が支払われる

残業代を支払っているだけ。上記までの例に比べてまだましですが、労働基準法違反であることに変わりありません。1分単位で支払われるべき残業代を、会社の勝手な独自ルールでカットさせられている状態です。

朝残業

比較的真面目な方、他の人に仕事が遅いと言われがちな方、周りに迷惑をかけたくない方、定時に帰りたいと強く思っている方に多い「朝残業」。

人によっては夜勤者のためにと30分、1時間も早く「早番」に出勤される方もいます。これに対して残業代が支払われていないのであればサービス残業となり労働基準法違反になります。

夜勤者の負担軽減や事故防止のため会社側が強要する場合もありますが、「朝残業」は比較的、職員が自ら勝手に継続的に行なっている場合が少なくありません。

この点、管理者やリーダーは注意が必要です。「朝残業」を行う方は夜勤者にはありがたいと思われますが、「朝残業」をしない他の介護職員からは迷惑だと思われがちです。

会社の決まり、指示を無視して30分早く働いて、会社にサービス残業させているという既成事実をつくっている職員の方が、早番からの評価が高く、会社の指示通りに出勤している人の方が早番からの評価が低いだなんて、不合理過ぎだと思います。

着替え、仮眠、見守り、休憩の時間

介護の現場で最も頻度の高いサービス残業といえます。電話番やナースコールがなった際の対応、利用者様の見守り。もしくは、突発的な事態への対応が義務付けられている仮眠時間。

これらは全て、いつでも動けるよう待機している時間ですので、休憩時間とはっきりいうことができません。労働基準法上、労働時間に該当すると判断される可能性が非常に高い状態。

また、着替え・更衣が義務付けられているのであれば、着替え・更衣そのものが指揮命令下に置かれているのでやはり労働時間に該当します。

労働時間に該当するのであれば残業代をお支払いしなければなりません。もし支払っていないのであれば、着替えや仮眠時間、見守りや休憩をきっちり分けるか、残業代を支払うか、対応を変えなければ、サービス残業を強制しているのと同じことです。

みなし残業

介護の現場では比較的少ない傾向にある「みなし残業」。もし「みなし残業」が採用されている会社であればかなり注意が必要です。

「みなし残業」とは、あらかじめ設定した時間(〇〇時間)に対して、固定残業手当として毎月給与にお支払いする残業代です。もしあらかじめ設定した時間(〇〇時間)より残業をしなくても、設定した時間働いたものとして給与が支払われるのでお得。

しかしその実態は、設定した時間以上残業するケースの方が多いのです。この場合、みなし残業代にプラスして、超えた分別途残業代をお支払いしなければなりません。しかしお支払いされていない場合は労働基準法違反に該当します。

仕事を家でやらせる

ケアプランの作成、イベントの計画、レクリエーションや壁飾りの準備、シフト表の作成など、パソコンを使ったり、ペンを使ったり、施設に必要な買い物をさせられたり、現場の介護職員が事務的な作業を行う場合に、比較的強要されているサービス残業です。

リーダーであったり、それなりに役職があったり、頼りにされることは介護職員本人たちにとっては嬉しいことです。しかしその業務を行うための人的補強もなく、法定労働時間内にその業務を行うための時間を別途、設けていないのであれば、家で仕事をするように強要しているのと同じことです。

名ばかり管理職の残業

管理監督者には残業代を支払わなくてもいいという労働基準法の決まりは、比較的多くの方が知っています。しかし、労働基準法上の管理監督者に該当する要件についてまでご存知の方はとても少なく、不正に残業代が支払われていないケースもあります。

出勤と退社、勤務時間に自由があり、施設・ホーム内において、自らの裁量で行使できる権限が多く、その地位にふさわしい待遇を受けている人だけが、労働基準法上の管理監督者に該当します。

その地位にふさわしい待遇とは、その施設内においてのみ社長のような権限を与えられている状態です。つまり、その施設、支店においての経営権、人事権を持っており、遅刻・欠勤がない、自分で決められる勤務時間、さらにはその地位にふさわしい年収が求められます。

しかし、例えば特養の施設長の年収の相場は540万円程度、男性だと600万円といデータが、公益財団法人介護労働安定センターにより公表されています。今までの裁判例で見ると、その地位にふさわしい年収として微妙なラインです。

そのため、介護の現場における施設長やホーム長の多くは、労働基準法上の管理監督者に該当しない人の方が多いのではないでしょうか? その施設、支店においての経営権、人事権を持たされて、勤務時間が自由裁量で、その地位にふさわしい年収もらっている人がどれだけいるのか……。

つまり、介護の現場においては、多くの管理職に該当する施設長やホーム長の残業代は、しっかりお支払いされる必要があります。労働基準法上の管理監督者に該当する場合であっても、深夜残業代は支払わなければなりません。

サービス残業の原因は全て会社側にある

小さな会社の経営者であれば、経営者から労働基準法の理解が足りていない場合が少なくありません。比較的大きな会社であっても、教育が行き渡っていないければ、管理職の方が労働基準法を理解していないなんてことも珍しくもありません。

労働基準法違反は原則、不法行為にとどまり犯罪ではありません。しかし法律を守っていないという意味では同じこと。

また、労働基準法違反であっても、悪質であれば刑事上の犯罪として立件される場合もあります。人を雇用する責任がある以上、知らなかったではなく、知る努力と法を守る義務が発生します。経営者がまず学び、管理職やリーダーを始め、すべての職員に教えていくことが求められています。

サービス残業をなくさなければ介護職員がどんどん減っていく

モチベーションを下げる

「勝手に介護職員が行なっている「朝残業」や「サービス残業」は会社側に責任はない」「休憩中や始業開始5分前にナースコールを取ってもらうくらいいいじゃないか」と軽く考えている方、比較的多くいらっしゃるのではないでしょうか。

おっしゃる通りそういうふうに考えてしまうことも無理からぬことだとも思います。しかしその考えを改めない限り、介護職員はどんどんモチベーションを下げどんどん辞めていきます。

ある介護職員が継続的に行なっている「朝残業」。放置するとどうなると思いますか? 「朝残業」を行なっている本人は、日々の生活に疲れやすくなりミスがさらに増えるかもしれません。また「朝残業」をしてくれる介護職員はありがたいと夜勤者に重宝され、「朝残業」をしない介護職員が悪いような間違った雰囲気が職場に蔓延するかもしれません。

「朝残業」を当たり前にしてしまっては、「朝残業」をしない介護職員がいわれのない理不尽な不利益を受けることになり、モチベーションを低下させてしまうのです。「朝残業」をする理由が時間内に終えることができないから、自分の仕事が遅くて迷惑をかけているからの場合はどうでしょうか? 業務量の問題や能率の問題は本人だけで改善できる問題ではありません。つまり会社側が業務量を調整すべきです。

「朝残業」は会社のみんなの「課題」であり、個人の責任であっていいわけがないのです。休憩中や始業開始5分前に強制されるナースコールも同じ。残業代が発生しなのであれば何の強制力もありません。勤務時間外にナースコールに出ることが美徳だと思うのであれば、サービス残業を支払って法律を守ることの方こそ美徳だと考えられるはずです。

仕事時間前なのに、休憩時間なのに、仕事をしてもらうのが当たり前といった介護職員みんなの意識は、会社側、管理者が責任を持って改善すべき「課題」。それをいつまでも継続していたら介護職員のモチベーションはどんどん下がっていきます。

退職者の意識の差が新しい介護職員の芽を摘んでいく

サービス残業が当たり前だった時代の介護職員や管理職の方々は、自分を犠牲にして人に尽くすことを美徳と考えています。しかしそれはその方個人の価値観であり、押し付けていい類のものではありません。

そもそも労働時間外において、無償で利用者様に尽くす行為はプライベートの時間を削って大切な家族たちをないがしろにする行為です。そういう見方をすれば「人に尽くす=美徳」となるわけでないことを考慮しましょう。

人は皆自分や大切な人たちの幸せのために働いています。「職場に尽くす=美徳」「家族に尽くす=美徳」どちらを美徳とするのかは人それぞれです。

労働時間外における利用者様への尽くしや、プライベートを犠牲にさせ続ける行為は新しい介護職員の目を摘んでいくだけ。より人材不足が加速します。

サービス残業をなくさなければ、いつか法的罰則を受ける

コンプライアンス(法令遵守)をおろそかにする会社は防御をしないのと同じこと。いつか法的制裁を受けることになります。

例えば、残業はしないように指示しているにもかかわらず、サービス残業をしないようには支持しない会社。サービス残業だけを見て見ぬ振りし続けていると、介護職員のその後の行動次第で、労働基準法違反として罰則を受けることになります。

目の前のコスト削減のため介護職員に甘えバカにし続けるのか。それとも目の前のコスト削減より、会社を守ること、そして介護職員に甘えることをやめ、大切にするのか、どちらを選択すべきかは誰にでもわかる簡単な選択です。

親の介護の前に必須! 実家 親の持ち家の価値を知っておこう

親の介護の期間が長くなればなるほど重くのしかかってくるのが費用の問題。

最初は親孝行の意を込めて快く費用を負担できても、長生きすればどんどん金額が積み上がっていくのが現実。

自分たちの生活もあるので、親の介護費用を援助し続けるには限界があります。

そのため、親の介護費用は基本的にまず親の財産を使っていくことが、お互いのため。

だからこそ、すぐに売る売らないは別にして、
あなたの実家・親の持ち家の価値を知っておく(一度、査定をしておく)ことで、介護費用にあてられる金銭の目処が立ちます。

実家終いノート編集部
家を売らなくても、担保にして金融機関からお金を借りることも可能ですし、家の金銭的価値を把握しておけば選択肢が増えますよ。

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  • この記事を書いた人

孝行(たかゆき)

40代男性。有料老人ホーム、訪問介護、グループホームに勤務経験があり介護の現場に詳しい。主任やユニットリーダー兼計画作成担当者も経験。介護事業新規立ち上げ手伝い中。旧サイト名「フィリアル(親孝行)」部分の記事を主に執筆。

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