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体重測定は最も信頼性の高い病気の判断基準
毎月継続して体重測定を行う目的は病気の早期発見
- 病気の早期発見
- 介護・医療関係者への情報提供
- 太り過ぎ・痩せすぎ防止
高齢者にとっての体重測定はとても大変です。身体機能が低下していればいるほどに難しくなります。もちろん、それを介助する側も大変。事故がおきないよう、安全に気を配りながら、嫌がる親御さんや利用者様を体重計に乗せなければならないのです。
車椅子用の体重計があれば容易になりますが、とても高価で大きいので一般家庭向けではありません。小さな体重計に乗るのは怖いですから、本人にとっても車椅子用の体重計の方が安心です。しかし車椅子用の体重計は、大きな施設や病院でしか見たことがありません。レンタルしても高いです。
忙しい時間の合間合間を利用して、大変な思いをして行われる体重測定。最も重要な目的は「病気の早期発見」です。次に重要なのは「介護・医療関係者への情報提供」。自分では活かしきれない集めたデータを、専門家にいかしてもらうために体重というデータを集めます。「太り過ぎ・痩せすぎ防止」の指標にもなります。
発病者をふるいわける 世界の医師が最も信頼を寄せる体重データ
医療の現場で行われる、患者さんの栄養状態を評価し、栄養に関する問題点をあきらかにすることを目的に行われる「栄養アセスメント」。まず行われるのが選別(栄養スクリーニング)です。「発病している人をふるいわける方法」と言い換えることもできます。
「発病している人をふるいわける方法」はいくつかあるのでしょうが、世界で最も高い信頼を寄せられ、活用されている「栄養アセスメント」の方法は「主観的包括的 アセスメント SGA(Subjective Global Assessment)」と呼ばれるものです。
「SGA」は6つの項目の評価から成り立っていますが、そのうちの1つが『体重変化』。世界中の医師、看護師、栄養士、薬剤師などが、「発病している人をふるいわける方法」として『体重変化』に着目しているということになります。
データ収集は活かされないと意味がない
危険を冒して、大変な思いをして、忙しい時間を割いてまで、本当に毎月の体重測定が必要なのか、疑問に感じている方は少なくないはずです。個人的には、活用されないのであれば、大変な思いをしてまで体重測定を行う必要はないと考えています。
データは集めるだけでは意味ないからです。治療と健康維持・増進を目的とする医療関係者にとって、『体重』というデータの活用は当たり前のことです。
しかし、高齢者の自立支援や医療との仲介を目的とする介護関係者にとっての『体重』はただの情報であって、活かし方を知らない人がほとんど。病気を発見するのは医療側の役割であって、介護側の役割ではありません。習わないですし、知らなくて当然です。
実際私が働いていた施設等でも、忙しさから『体重測定』を忘れたり、測って記録するだけで、活用されることも、医師や看護師に伝えられることもありませんでした。報告されるとしたら、前月より明らかに体重減少があったときだけ。そこに基準はありません。
教育・育成全般に言えることですが、目的や重要性、活用法や判断基準がわからない状態で継続される行為は、面倒な流れ作業でしかなく、やっつけ仕事になりがち。活かされる機会はありません。
活かされる機会がないのであれば、ただただ仕事量を増やしているだけになりますので、やめてしまった方がメリットが大きいでしょう。実際、していない方の方が多かったように思います。
病的な体重減少の判断基準になる体重測定の活用法
1月に1度、継続的に行われる『体重』データは、「発病している人をふるいわける方法」として、世界の医療で最も高い信頼を寄せられる重要なデータです。①体重を測って、②体重を記録して、③計算するだけ。
簡単なので、ご家庭でも目的・重要性・活用法・基準を理解した上での『体重測定』をご提案します。基準を上回った時は、すぐにでも医療関係者に報告しましょう。入院など、体重を記入する際にも困ることがなくなります。
医療関係者が「病的な体重減少」として判断する基準
- 1ヶ月間で5%以上の体重減少があった時
- 3ヶ月間で7.5%以上の体重減少があった時
- 6ヶ月間で10%以上の体重減少があった時
『体重』は前月とだけ比較されがちですが、3ヶ月前、6ヶ月前とも比較することで、その異常な『体重減少』がはっきり見えてきます。