多くの高齢者は、何かしら体に問題を抱え、通院中です。あなたの親御さんももし、自宅にて療養中、通院が困難になってしまったら。看護師・保健師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問し、処置、治療、リハビリしてくれるサービスがあります。今回は訪問看護と訪問リハビリテーションについて説明します。
Contents
(介護予防)訪問看護とは
訪問看護とは、看護師などの職員が、あなたの親御さんの自宅に訪問し、病気や障害を抱える親御さんを治療・処置してくれるサービス。看護師以外にも、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などが訪問しリハビリもしてくれます。訪問看護の目的は、病気や障害を持った人が住み慣れた地域や家庭で、その人らしく過ごせるようにすることが目的です。
(介護予防)訪問リハビリテーションとは
訪問リハビリテーションとは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの職員が、あなたの親御さんの自宅に訪問し、リハビリをしてくれるサービス。訪問リハビリの目的は、障害を持った人が住み慣れた地域や家庭で、その人らしく日常生活が過ごせるようにすること、社会参加を図ることが目的です。
訪問看護と訪問リハビリテーションの違い
項目 | (介護予防)訪問看護 | (介護予防)訪問リハビリ |
---|---|---|
看護 | 看護師による治療・処置中心 | なし |
リハビリ | 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士によるリハビリを受けることができるが、看護師によるリハビリになることもある。 | 病院や老健で働く、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による専門的リハビリを受けることができる。 |
利用条件 | 利用条件1と2両方必要 | 利用条件1と2と3全て必要 |
利用条件1 | 要支援1〜2、要介護1〜5の方 | 要支援1〜2、要介護1〜5の方 |
利用条件2 | 主治医から「訪問看護指示書」を発行してもらえた方 | 主治医から訪問リハビリが必要だと認められ、「診療情報提供書(紹介状)」を発行してもらえた方 |
利用条件3 | なし | 訪問リハビリを行う病院または介護老人保健施設の診察(3ヶ月に1度)を受けた方 |
介護保険での利用制限 | 毎月の利用限度額を超えると全額自己負担 | 毎月の利用限度額を超えると全額自己負担 |
ー | 週120分かつ週6回まで(1回20分の場合週6回) | |
医療保険での利用制限 | 週3回まで | 週120分かつ週6回まで(1回20分の場合週6回) |
原則1回90分まで | ー | |
介護保険と医療保険の併用 | 原則不可 | 原則不可 |
継続利用する条件 | 主治医から中止と言われない限りは継続利用可能 | 3ヶ月に1度訪問リハビリ側の病院の診察が必要 |
会社の数 | 街にたくさんあるので利用できないことはない | 街に少ないのでほとんど利用できない |
訪問看護の具体的サービス
訪問看護のサービスは、非常に多岐に渡ります。
- 健康状態の観察
- 食事や運動などの助言
- 血圧・体温・呼吸・脈拍のチェック
- 療養生活のお世話
- 食事のお手伝い
- お口の清潔ケア
- 洗面・洗髪
- シャワー・入浴・手浴・足浴などのお手伝い
- 髭剃り、整髪、着替えなど
- 排泄のお手伝い
- 寝返りできない人のため、床ずれ防止のため体の向きを変える
- 車いすやベッドへの乗り移りのお手伝い
- 介護保険サービスなどの手配状況の確認と助言
- 居室やベッド周りなどの安全確保、採光、換気、空調などの確認と助言
- 杖、車イス、介護ベッドなどの福祉用品の手配状況の確認と助言
- ガーゼやオムツなど医療用品の手配
- 病気や怪我の治療と医療機器の管理
- 薬の服薬方法の指導、服薬確認
- 床ずれ処置
- 血糖測定
- 人工肛門・パウチ交換
- 浣腸
- 経管栄養(胃ろう・経鼻)
- 摘便
- 腸ろう・腎ろう・膀胱ろう管理
- たんの吸引
- 気管カニューレ管理
- 薬剤やスチームの吸入
- 永久気管孔管理
- ガーゼ交換
- 導尿
- カテーテル管理
- 人工呼吸器管理
- 点滴
- IVH管理(中心静脈栄養)
- 注射(静脈、筋肉、皮下)
- 在宅酸素療法
- 採血
- 認知症や精神的・心理的な看護
- 親御さん自身や親御さんを介護するあなた、その他の家族に対する相談・助言
- 終末期(ターミナル)の看護
- がん末期や終末期を自宅で過ごせるように支援
- 在宅でのリハビリテーション
- 体が固まったり、動かなくなってしまうことを防止
- 筋力の低下予防や維持
- 身体機能を向上させるための訓練・指導
- 食べる・動く・歩く・トイレ・入浴・歯磨きなどの日常生活で必要となる動作の訓練・指導
- 障害があっても自宅で安全に過ごせるための環境づくり(福祉用具やリフォームなど)に対する助言
- 親御さんを介護する家族への助言
- 介護の方法
- 接し方
- 介護用品
- その他介護関連
訪問リハビリの具体的サービス
- 食事、入浴、トイレ、着替え、寝返り、起き上がりなど、自宅で生活する上で必要な訓練
- 関節が固まるのを防いだり、筋力低下を防ぐための運動・トレーニング
- 屋外での歩行訓練
- 手工芸、園芸、レクリエーションなどを用いた手を動かす訓練
- 家族への負担軽減や介助方法の指導・アドバイス
- 福祉用具やリフォームのアドバイス
- ことばや食事を飲込む訓練
介護保険での訪問看護の利用料金
時間 | 料金全額 | 自己負担1割 |
---|---|---|
〜20分 | 3,100 | 310 |
20〜30分 | 4,630 | 463 |
30〜60分 | 8,140 | 814 |
60〜90分 | 11,170 | 1,117 |
早朝(6〜8時)夜間(18〜22時) | 25%増し | 25%増し |
深夜(22〜翌朝6時) | 50%増し | 50%増し |
時間 | 料金全額 | 自己負担1割 |
---|---|---|
〜20分 | 2,620 | 262 |
20〜30分 | 3,920 | 392 |
30〜60分 | 5,670 | 567 |
60〜90分 | 8,350 | 835 |
早朝(6〜8時)夜間(18〜22時) | 25%増し | 25%増し |
深夜(22〜翌朝6時) | 50%増し | 50%増し |
時間 | 料金全額 | 自己負担1割 |
---|---|---|
〜20分 | 3,020 | 302 |
早朝(6〜8時)夜間(18〜22時) | 25%増し | 25%増し |
深夜(22〜翌朝6時) | 50%増し | 50%増し |
※平成28年4月施行された、平成29年7月時点での料金表です。
※地域によって多少異なります。
※通常は1割負担です。
※年金+年収が280万以上の方は2割負担なので2倍してください。
※2018年8月からは、年金+年収が340万以上の方は3割負担の予定です。
訪問看護・訪問リハビリを利用する際の注意点
訪問リハビリ利用条件は訪問看護より面倒 だけどリハビリ内容は本格的
訪問看護の場合、親御さんの主治医が発行する「訪問看護指示書」と呼ばれる医師からの指示をもとにリハビリが提供。訪問看護ステーションに所属する理学療法士は、主治医の指示を受けてリハビリをします。ややこしいのですが、訪問看護にてリハビリを受ける場合、このような形になるのです。訪問看護を利用しているけど、サービス内容はリハビリという形。
訪問リハビリの場合、どこかの病院または介護老人保健施設に所属する職員が訪問(訪問リハビリ)してくれる仕組みです。そのため、あなたの親御さんの主治医が、他の病院または老健に所属する職員に対して、勝手に、直接指示を出すことができません。
A病院の医師である伊藤先生(主治医)が、B病院のリハビリテーション科で働く理学療法士である佐藤くんに、「佐藤くん、訪問リハビリをお願いしたい。」って勝手に指示を出したらおかしなことになります。当然佐藤くんはこういうはずです。「お声をかけていただいて恐縮ですが、僕はB病院の職員なので、B病院の医師の指示がないと動けません。まずはB病院宛に紹介状を書いて、患者さんをB病院に紹介していただけませんか。」このような返事になるかと思います。
そこで主治医である伊藤先生は、B病院の医師宛にあなたの親御さんを紹介(紹介状)します。B病院の医師は、紹介状をもとに親御さんを診察。その上でB病院の医師が、B病院リハビリテーション科で働く理学療法士、佐藤くんにリハビリの指示を出すという流れになります。
3ヶ月以上継続するには、3ヶ月に一度B病院での診察が必要です。主治医が所属するA病院にはいつも通り定期診察を受け、B病院からの診察も受けなければならなくなるのです。3ヶ月に1度だけですが。
このように、訪問看護でリハビリを受ける場合と、訪問リハビリでリハビリを受ける場合とで手間が全然違います。ですが、訪問リハビリでのリハビリは、病院または介護老人保健施設のリハビリテーション科に所属する職員がしてくれますので、訪問看護でのリハビリより本格的だといえます。
訪問看護でのリハビリでは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリの専門家ではなく、看護師が訪問することもあり得ます。
重い病気の場合は医療保険で訪問看護を利用することになる
親御さんがもし、国によって決められた重い病気の場合、医療保険で訪問看護を受けることになります。重い病気の種類を覚える必要はありません。病院側がしっかり手続きしてくれます。この場合、「訪問看護指示書」ではなく、「特別訪問看護指示書」が、主治医によって発行。
「特別訪問看護指示書」とは、特別に重い病気だと決められた病気の方の場合、利用制限のある訪問看護だけでは足りなくなる恐れがある場合に発行されるものです。「特別訪問看護指示書」が発行されると、週3回、1回90分までという利用制限がなくなります。
いかがでしたか。今回は訪問看護と訪問リハビリテーションについてご説明しました。そんなときでも看護師や理学療法士が自宅を訪問し、処置、治療、リハビリしてくれるので安心ですね。