介護保険制度を理解する

「往診」と「訪問診療」と「居宅療養管理指導」の違いとは?

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 「往診」と「訪問診療」と「居宅療養管理指導」の違い、即座にわかる方いらっしゃるでしょうか。実際に勤めている方でない限り、しっかりその違いをわかっていない方は比較的大勢います。また、「往診」と「訪問診療」が同じものだと思っている方も珍しくありません。

そこで、今回は「往診」と「訪問診療」と「居宅療養管理指導」の違いをご紹介します。

往診・訪問診療・居宅療養管理指導比較

往診・訪問診療・居宅療養管理指導比較表
項目 往診 訪問診療 (介護予防)居宅療養管理指導
保険 医療保険 医療保険 介護保険
対象者 会社により異なる 在宅療養中で通院が困難な方 要支援1〜2、要介護1〜5の方
サービス内容 診療、治療、薬の処方、療養上の相談、指導等 診療、治療、薬の処方、療養上の相談、指導等 療養上の相談、管理指導等
計画性 不定期・臨時的 計画的・定期的 計画的・定期的
緊急度
どのような場合にお願いするか 突然の発熱、頭痛、嘔吐、ギックリ腰、ケガなど、救急車を呼ぶほどではない、または呼ぶべきかどうかわからなく、救急病院を受診することが困難な場合 自宅療養中につき、定期的な診療が必要な方において、一人で通院が困難な場合 自宅療養中につき、定期的な診療が必要な方において、一人で通院が困難な場合
サービスの依頼方法 電話・メールなどによる往診のお問い合わせ 電話などによる相談 担当のケアマネジャーに相談
訪問回数限度 決まりなし 原則月2回まで 原則月2回まで
お支払い時期 現地でのお支払い 月に1度まとめてお支払い 月に1度まとめてお支払い
料金 診察内容により異なる 診察内容により異なる 600円以下(1割負担の場合)

適応される保険が違う

 「往診」と「訪問診療」は医療保険対象の医療サービス。「居宅療養管理指導」は介護保険対象の介護保険サービスです。

制度上の対象者が違う

 「往診」と「訪問診療」は、風邪やケガで受診するのと同じです。診察してくれる場所が、病院か自宅かの差でしかないのです。そのため、制度上の年齢制限はありません。高齢者じゃなくても利用できます。誰もが病気やケガをするので、誰もが対象です。

ただし通常の病院と同じように、「小児科」に対応しているかどうか、「外科」に対応しているかどうかなどの差はあるので、お願いする「往診」「訪問診療」によってさまざまです。この点、通常の病院と大きな差はありません。

 「訪問診療」と「居宅療養管理指導」に関しては、原則「在宅療養中で、一人での通院が困難な方」に限られます。一人で定期的な通院ができる方も対象にしてしまうと、本当に必要とする人が「訪問診療」のサービスを受けることができなくなってしまうからです。

 「居宅療養管理指導」は、介護保険サービスなので要支援1〜2、要介護1〜5の要介護認定を受けている方だけが対象です。要介護認定を受けることができる対象年齢は、基本的に65歳以上です。特定疾病に該当する方だけは、40~64歳でも要介護認定を受けることができます。

サービス内容が違う

 一番重要なところです。「往診」と「訪問診療」は、医療保険のサービスなので、診療、治療、薬の処方、療養上の相談、指導等、病院に受診した時とほぼ同じ医療サービスを受けることが可能です。中には、薬の処方だけでなく、薬を届けてくれるサービスを提供してくれるところもあるので助かります。

 「居宅療養管理指導」は介護保険サービスなので、サービス内容は療養上の相談、管理指導等だけにかぎります。あまり意味のないように感じますが、そうとは限りません。

自宅療養中の場合、「ちょっと痛むな。」とか「ちょっと違和感を感じるな。」と、身体に小さな異変を感じることが多々ありますが、この程度であれば受診を悩むはずです。そのような場合にも、気軽に相談できるのは、安心につながります。

また、大きな病気の早期発見にもなりますし、高齢者だけのお住まいにおける定期訪問は、孤独死や自殺、無理心中、虐待などの問題も起きにくくなるなど、大きなメリットもあります。

利用形態と緊急度が違う

 「往診」は、突然の発熱、頭痛、嘔吐、ギックリ腰、ケガなど、救急車を呼ぶほどではない、または呼ぶべきかどうかわからなく、救急病院を受診することが困難な場合に利用します。イメージとしては、大河ドラマなどにおける息を切らせて駆けつけてくれるお医者さんです。

そのため、比較的緊急度が高い場合に利用することになります。いつ病気やケガをするかわかりませんので、不定期・臨時的にお願いするかたちになります。

 「訪問診療」と「居宅療養管理指導」は、「往診」や受診、または退院後など、自宅にて療養中の方が利用します。そのため、比較的緊急度が低く、病状が安定している方が利用することになります。

「訪問診療」と「居宅療養管理指導」は、計画的かつ定期的にお医者さんが訪問してくれるサービスなので、その都度お医者さんを呼ぶ形態をとる「往診」と大きく異なります。

「訪問診療」は、「往診」と同じく診療、治療、薬の処方ができるので、緊急度は中くらいの方が利用すると考えるとわかりやすいでしょうか。

「居宅療養管理指導」は、病状が最も安定している方で緊急度が最も低い方が利用するに向いたサービスです。また、介護保険サービスの1つなので、ケアマネージャーと連携し、ケアプランの中に計画されます。

サービスの依頼方法が違う

 「往診」は、病気やケガの発症の都度利用するサービスなので、電話やメールにてサービスを依頼します。電話やメールでの症状を聞いたお医者さんが必要に応じて訪問し、診察・治療・処方します。訪問が必要ない場合でも、24時間いつでも相談できるので安心です。

 「訪問診療」は、定期的かつ継続的にお医者さんに訪問してもらうことになるので、まずは電話などで相談するところから始まります。症状などをしっかり聞いてくれた上で、診療計画が立てられ、申し込みが受理されれば、診療計画に基づいて定期的なお医者さんが訪問してくれるようになります。

 「居宅療養管理指導」は、介護保険サービスの中の「訪問型サービス」のひとつになります。そのため、担当のケアマネジャーに相談するところから始まります。ご自身で希望する「居宅療養管理指導」提供事業者をケアマネージャーに伝えてもいいですし、ケアマネージャーに紹介してもらう形でもよいかと思います。

ケアマネージャーにお願いすれば、「居宅療養管理指導」提供事業者に連絡して、計画作成(ケアプラン)がなされ契約。その後、お医者さんが定期的に訪問してくれるようになります。

訪問回数限度が違う

 「往診」は、病気やケガの発生するたびにお願いするサービスなので、訪問回数に制限があるわけではありません。

 「訪問診療」と「居宅療養管理指導」は、定期訪問してもらうサービスなので、定期訪問に回数限度が法律で決められています。両方ともに原則月2回までです。原則ですから、ターミナルケアなど、条件が揃えば月3回以上も可能になる場合があります。

 「居宅療養管理指導」の場合、医師の判断で、医師だけでなく、歯科医師、病院の薬剤師、薬局の薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士、保健師・看護師などの訪問もあり得ます。

歯科医師、病院の薬剤師、管理栄養士、保健師・看護師は、医師と同じく原則月2回までが限度ですが、薬局の薬剤師と歯科衛生士は月4回までが限度となります。

お支払い時期が違う

 「往診」は、不定期・臨時的に診察を受けることのできるサービスなので、通常の病院同様、その都度お支払いします。

 「訪問診療」と「居宅療養管理指導」は、計画的・定期的に行われるサービスですので、お支払いは月に1回まとめてお支払いすることになります。

料金が違う

 医療保険は、高齢者でも収入によって1〜3割の負担になります。介護保険も、現在は収入によって1〜2割の負担になります。また、2018年8月からは、医療保険同様に、収入によって1〜3割の負担に変更されます。

「往診」と「訪問診療」は、医療保険が適用される通常の受診となんら変わりありませんので、診察や治療、処方内容によってその都度、料金が異なります。

「居宅療養管理指導」に関しては、医療行為ではなく、療養上の相談、管理指導等になりますので、1割負担の方なら、1回につきおおよそ600円以下と安くすみます。

「往診」「訪問診療」「居宅療養管理指導」複合してサービス提供してくれるところもある

 「往診」「訪問診療」「居宅療養管理指導」は、お医者さんが自宅を訪問する点は共通しています。そのため、「訪問診療」サービスを提供する会社であっても、必要に応じて「往診」もしてくれるなど、複合的にサービスを提供してくれている場合もあります。

 いかがでしたか。今回は「往診」と「訪問診療」と「居宅療養管理指導」の違いをご紹介しました。ぜひ参考にしてみてくださいね。

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  • この記事を書いた人

孝行(たかゆき)

40代男性。有料老人ホーム、訪問介護、グループホームに勤務経験があり介護の現場に詳しい。主任やユニットリーダー兼計画作成担当者も経験。介護事業新規立ち上げ手伝い中。旧サイト名「フィリアル(親孝行)」部分の記事を主に執筆。

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