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高額療養費とは
高額療養費とは、高額な医療費(自己負担限度額)を支払った際に払い戻しを受けることのできる制度をいいます。例えば、9月1日から9月30日までの入院医療費が100万円だったとします。入院された方が71歳かつ現役世代並みの所得のない方であれば、入院医療費100万円のうち2割の自己負担分、20万円のお支払いで大丈夫です。
100万円が20万円のお支払いで済むので、とても助かるありがたい制度です。しかし、20万円でもまだまだ高額で、これでは入院することができない方も出てきてしまいます。そこで、1日から末日までの1ヶ月間の自己負担額(2割分の20万円)に、所得に応じた自己負担限度額を設けたのです。
そのため、この方の自己負担所得区分が「一般所得者」であれば、57,600円のお支払いで良いことになっています。100万円の入院医療費が、20万円でもなく57,600円になります。実際のお支払い金額は、医療保険の適用範囲外にあたる、食事代やベッド代などが含まれますので、もっと高くなりますが、それでもおおよそ10万円。これなら入院して治療することができます。
70歳以上の高額療養費の自己負担限度額
被保険者の所得区分 | 説明 | 外来(個人ごと)自己負担限度額 | 外来・入院(世帯ごと)自己負担限度額 |
---|---|---|---|
①現役並み所得者 | 標準報酬月額28万円以上で高齢受給者証の負担割合が3割の方 | 57,600円 | 80,100円+(総医療費-267,000円)×1%[多数該当:44,400円] |
②一般所得者 | ①③④以外の方 | 14,000円 | 57,600円[多数該当:44,400円] |
③低所得者2 | 本人が市区町村民税の非課税者など | 8,000円 | 24,600円 |
④低所得者1 | 本人とその扶養家族全ての方の収入から必要経費・控除額を除いた後の所得がない方 | 8,000円 | 15,000円 |
70歳から74歳までの医療費の自己負担限度額は所得に応じて異なります。9月1日から9月30日までの入院医療費が100万円の場合、所得に応じて80,100円+1%、57,600円、24,600円、15,000円のいずれかのお支払いで大丈夫です。
そのほか、食事代、ベッド代(個室利用時)、先進医療での治療なら先進医療代、診断書代、おむつ代、パジャマやタオルなどのレンタル代、洗濯機使用代、テレビ視聴料などが発生。これらの費用は、高額療養費に適応されませんので全額実費負担(食事代だけ高額療養費とは別の限度額が決められています。)です。
『高齢者の入院費用は1月約20万!概算が簡単にわかる7つのポイント』
高額療養費は残念ながら月ごと
高額療養費の自己負担限度額は月ごとの限度額です。上の例において、入院期間を9月1日から9月30日ではなく、9月16日から10月15日までの30日間とした場合、入院期間が30日間と全く一緒なのにもかかわらず、月をまたいだだけで支払額が倍くらいになります。
9月16日から9月30日までの15日間の入院医療費が50万円、10月1日から10月15日までの15日間の入院医療費が50万円、合計100万円と同じ金額です。高額療養費の自己負担限度額は、月ごとの限度額ですので月ごとに計算します。
71歳かつ現役世代並みの所得のない方の入院ですから、50万円の入院費用のうち2割の負担、10万円です。「一般所得者」なので1ヶ月間の自己負担限度額は57,600円。10月1日から10月15日までの15日間も同じ期間ですので57,600円。合計で115,200円。
期間も条件も全く同じ。それにもかかわらず倍の支払額となります。入院している期間が月をまたぐだけでその分医療費が増加するのです。
高額療養費の自己負担額は月ごと世帯全体で合算できる
自己負担限度額は、「外来だけの医療費」の場合と「外来+入院医療費」の場合で限度額が異なります。「外来だけの医療費」は個人単位での支払いに対して限度額が決まりますが、「外来+入院医療費」は世帯単位での支払いに対して限度額が決まります。
「外来+入院医療費」の場合、旦那さんと奥さんそれぞれの入院医療費を合算して、限度額を超えた分の支払いをしなくて済みます。入院医療費2人で200万円でも、「一般所得者」であればお支払いは57,600円です。
高額療養費の申請方法
70歳未満のときと異なり、基本的に特別な申請は必要ありません。「限度額適用認定証」も不要です。「高齢受給者証」または「後期高齢者医療被保険者証」を病院に提示するだけで、自己負担限度額だけのお支払いで大丈夫です。
ただし、住民税非課税世帯の方だけは少し対応が異なります。病院にはあなたの親御さんが住民税非課税世帯かどうか判断できません。そこで、「高齢受給者証」または「後期高齢者医療被保険者証」の提示を受けた病院側は、「一般所得者」の自己負担限度額で請求することとなります。
入院費用について57,600円の請求をされた場合、「低所得2」の方なら差額33,000円。「低所得1」の方なら差額42,600円多く支払うこととなります。そこで、住民税非課税世帯の方だけは、70歳未満のとき同様、以下のような申請が必要になります。
限度額適用認定証を交付してもらうための手続き
「高齢受給者証」または「後期高齢者医療被保険者証」に記載される保険者名を確認して、保険者に「限度額適用認定証」の交付を申請します。定期に受診することで自己負担限度額を毎月超えてしまうなら、1年に1度定期に申請。入院することで1ヶ月間の自己負担限度額を超える可能性がわかっているなら、あらかじめ申請しておきます。
保険者の窓口に直接出向いてもいいですし、中には電話で確認すると郵送で申請を可能としているところもあります。必要なものは以下の通り。保険者に事前申請し、あらかじめ「限度額適用認定証」を交付してもらい、病院に「高齢受給者証」または「後期高齢者医療被保険者証」と「限度額適用認定証」を一緒に提出すれば、窓口での支払いが「低所得2」の方で24,600円、「低所得1」の方で15,000円で済みます。一時的に57,600円の支払いをしなくていいのです。
- 申請書
- 親の健康保険証(74歳まで)
- 親の健康保険高齢受給者証(74歳まで)
- 親の後期高齢者医療被保険者証(75歳から)
- 親のマイナンバーまたは通知カード
- 親の身分証明書
- 親の印鑑
- あなたの身分証明書
- 法定代理人の場合は登記事項証明書
- 代理人は被保険者本人が署名等をした委任状
- 代理人であるあなたの印鑑
事後申請による払い戻しを受ける
あらかじめ「限度額適用認定証」の交付を受けなくても事後申請が可能です。この場合、病院に一度57,600円のお支払いをする必要があります。保険者からその旨お知らせしてくれることもありますが、基本的には自分で申請をすることになるでしょう。申請に必要なものは「限度額適用認定証を交付してもらうための手続き」と一緒です。