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誰もが「効率」の意味を勘違いしている
誰もが当たり前のように、反射的に、何の疑いもなく、さも当然のように、職場にて効率を上げようと考えます。しかしみなさんが考える効率は、本来の効率の意味とは少し違うことを知らない人が多い状態にあります。
A1,000万円を使って1,500万円を稼ぐのと、B500万円を使って1,000万円稼ぐのと、どちらの方が効率が高いといえますか?
AとBを比較すると、売上だけはAの方が500万円も高いです。しかし効率よく稼ぐことができているのは、圧倒的にBです。効率を測るため計算をするとAは33.3%。Bはなんと100%です。BはAより、3倍も効率が高いことになります。もしBがAと同じく1,000万円持っていたら、2,000万円も稼ぐことができるのです。
休憩を増やすと効率が上がることに誰も気がついていない
言い方は悪いですが、仕事をサボっている人たちは、会社の効率上昇に貢献しています。サボった方が良いという意味ではなく、できる限り業務量を減らし、介護職員に休憩を与えた方が効率が上がるというお話です。
例えば多くの施設系介護サービスには、タイムスケジュールが用意されています。有料老人ホーム、グループホーム、特養など、業務の流れはほとんど変わりません。食事、トイレ、体操、入浴、食事、入浴、レク、食事、トイレ、就寝といった大まかな流れ。
これらの業務は、できる限り絞り絞って圧縮します。多くの施設では、夕方16時前後は、わざわざ仕事を圧縮するまでもなく暇でしょうから、その時間に休憩を入れる工夫ができると思います。仮にもし16時前後に休憩を入れても、売り上げ自体は変わりありませんよね? それが介護サービスです。
職員の休憩を今までより15分増やすことができたなら、8時間の業務を7時間45分に圧縮できたということになります。つまり、売上を変えることなく、効率を上げることができたのです。
休みを増やすと効率が上がることに気づかない
介護職において、有給休暇の消化は悪ととらえられがちです。人材が足りておらず業務も忙しすぎるからです。酷い会社だと、誰かが風邪をひいて休むだけで、まるで犯罪者のような扱いをされます。
「体調管理も仕事だ!!!」とか言い出す責任者やリーダーもいます。もし体調管理も仕事だというのなら、24時間分の給与を支払わないと説得力がありません。対価がないのなら仕事ではないのです。
月に22日、1日8時間働く場合、1月に176時間働くことになります。もし、月に1度の有給を与えることができれば、176時間から168時間に仕事する時間を減らせることになります。176時間を使って同じ売上を稼ぐより、168時間で同じ売上を稼いだ方が効率が高いのです。人員基準の問題もありますので、利用者様が1人減った時が休みを取るチャンスです。
8時間勤務に対して8時間びっちりの業務を入れたら残業になる
残業になってしまうのはなぜでしょうか? 介護職員1人1人の仕事が遅いからでしょうか? それとも次から次へと業務を増やすからでしょうか?
様々な会社を見てきましたが、残業になってしまう理由は、上司や発言力のある人間が、次から次へ業務を増やすからです。しかも仕事を増やす人間の多くは、能率を上げる努力を怠ります。職員一人ひとりはもちろん、職員全体の能率を上げる努力もしないでおいて、仕事が遅いと職員個人のせいにして、責任を放棄しているのです。つまり、誰か個人に対して「仕事が遅い!」となじった途端に、その人の職務怠慢が確定されます。
能率を上げるような育成をしている介護の会社は非常に少ないと思います。管理者やリーダーが口にする言葉は、効率という言葉ばかりで能率に関しては触れられません。その割、効率が悪化する(業務を増やす)命令をするのです。
能率を上げる努力をしないまま業務を増やしてしまったら、時間内に仕事が終わらないに決まっています。今まで8時間かかっていたのに、業務を減らしたり、圧縮したり、能率を上げる育成をしたり、何も努力していない状態のまま所ごとを増やしているのですから、きっとその人は無能だと言われたいのでしょう。
それでは順序が違います。新たに仕事を増やしたいのであれば、増やす前に、先に業務を減らしたり、圧縮したり、能率を上げる育成したりしてからです。
また隊長の問題もあります。介護を提供する側も生身の人間。介護を受ける側も生身の人間。利用者様の体調ややる気はもちろん、介護職員の体調ややる気も常に一定ではありません。生モノなんだから当たり前ですが、体調不良や疲れ、やる気の低下を想定せずに業務を詰め込んでは、予定通りにうまく業務遂行がなされるわけがないのです。
1日1日どのようなことが起きるのか想定できないにもかかわらず、8時間びっちりの業務を詰め込んでは残業する人も出てくるのは当然のこと。7時間半で終わる程度の業務にとどめておけば良いのです。また、介護職員が少ない日は、その人員に合わせて業務を削る臨機応変さも求められます。
介護職員が減少している現在、業務を減らしたり、圧縮したり、能率を上げる育成をしたりせずに放置したままでは、事故が増え、質が落ちるだけにとどまらず、介護職員も減少していきます。
効率を上げるより能率を上げる方が大変
1時間で5人のオムツ交換ができる人を、1時間で8人のオムツ交換ができる人にすることを、能率を上げると言います。能率を上げ、無駄な業務を削っていけば、同時に効率も上がります。能率を上げ、自立支援できる人を増加できたり、売上を上げることができれば、さらに効率が上昇します。
人1人の能率を上げるには時間がかかります。例えばオムツ交換の能率をあげようと思ったら、まず最もオムツ交換のスピードが速い人の作業方法を観察・分析しなければなりません。2番目に速い人、3番目に速い人のオムツ交換の方法も観察・分析し、良い部分をわかりやすく、しっかりまとめます。利用者様のプライバシーを侵害せずに済むのであれば、写真や動画、イラストなんかも必要になります。
観察・分析した結果をまとめてマニュアル化し、他の職員にそのやり方を教え、練習期間を設けます。上手にできるようになるまで何度も試行錯誤してもらいます。それと同時にマニュアルも、教えた職員からのフィードバックをもらいつつ、わかりやすく改善していきます。それでもし10分速くオムツ交換が終わるようになればラッキーです。能率を上げる努力が実ったのです。
能率を上げるためには、これだけの努力が必要だということです。これだけのことをしてほんの少しだけ改善されます。ただ口だけで、オムツ交換が遅いと注意しても意味はありません。注意だけで済ます教育者や上司は職務怠慢。注意するだけなら小学生だってできます。
注意しただけで、その注意した相手のオムツ交換のスピードが上昇したのであれば、その手柄はその注意した相手だけのもの。あなたは何もしていません。小学生でもできる注意をしただけ。人に注意する前に、あなたが育成する職務をさぼらず頑張ったほうがいいと思います。
能率や効率の改善で自立支援の悪化・売上減少にはならない
オムツ交換の回数の減少や記録の最適化、ロボットやセンサー、電子機器の導入など、業務量を減らす手段は様々あります。じっくり時間をかけて介護職員1人1人を育成する手段もあります。そんな時間はないというのであれば、介護職員がどんどん辞めていくのをただ眺めているしかありません。
「介護職員が少ないからこそ」と考え方を改めて、自立支援や売上にかかわらない業務を減らし、ICT化を進め、介護職員の負担を減らし、育成する時間を作ることができれば、離職率を減らすことができます。能率が上がり、効率も上がり、介護職員の笑顔が増え、利用者様の笑顔につなげていくことになるでしょう。
業務を削る部分を間違わなければ、自立支援の結果を悪くすることなく環境の改善ができます。休みを与えるタイミングさえ間違わなければ売上減少にもなりません。
人が少ない今、どの部分の仕事を削り、何を大切にしなければならないのか、優先順位を明確にしておくことが大切です。みんなのいう間違った効率よりもなによりも、介護職員や利用者様の方が大切です。