介護職員にもケアマネにも、管理者やリーダーにも読んで欲しい、モニタリングの始まり『介護記録』を介護職員、ケアマネや医師・看護師、ご家族などに組織として仲間と一緒に橋渡し。ケアプランの改善を容易にする取り組みについてご紹介するページです。
ケアプランという「インプット」から始まり、介護記録などの「アウトプット」までの一連のサイクルを円滑に進めるために必要な事です。
このページにおけるゴールは、読んでいただけた介護関係者に、より良いケアプランという道具の改善を図り、利用者様の人生の目的地へしっかり迷わずサポートしていけるようになっていただくことです。
このページでは、インプットとアウトプットという言葉がたくさん出てきますので、あらかじめその意味を確認しておいてください。
- インプットとは:申し送り、ケアプラン、知識、体験などの情報を頭の中に入れることです。
- 業務とは:毎日継続して行われる仕事です。業務は必要なインプットがあるからこそ遂行することができます。
- アウトプットとは:業務を行なった結果、得られた知識、体験などの情報がアウトプットです。
Contents
『介護記録』は活用されて初めて意味をなす
「介護記録」は同じ介護職員はもちろん、ケアマネや医師・看護師、ご家族などに橋渡しすることで、初めて意味をなします。橋渡しができず、誰のためにも何の役にも立てないのであれば、その記録はしているだけ無駄。いわゆる仕事しているふりだとか、自己満足とか、給与泥棒といわれる行為になります。
わかりやすい「介護記録」にするだけでは何の意味もなく時間の無駄になるだけ。つまり、本来期待する「介護記録」の効果を出すことができません。
「介護記録」を改善する際には、「伝わりやすさ」だけでなく、一緒に「ケアプランの改善を容易にする取り組み」も行っていかなければなりません。
以下にご紹介する「ケアプランの改善を容易にする9の取り組み」は、ただの一例であり、ただの手段です。会社によっては使えないもの、自社だけではどうにもならないこともあるでしょう。
もちろんこういう方法もあるのではないかといった、ここに紹介していない方法もあると思います。大切なのは、「ケアプランの改善を容易にする取り組み」を継続して工夫し続けること。やり方は無限にあります。
手書きで記録しているところは、終業間近の記録の方法を工夫する
多くの介護職員の終業時間が18時だとします。食後なのでとても忙しい時間帯の一つ。介護職員たちは、遅番や夜勤者に仕事を残さないためにも、仕事を終わらせようと必死に努力してくれます。
そうして18時前に、もしくは18時ぴったりに、場合によっては18時過ぎてまで介護職員に仕事をさせ続けているのだとしたら、まずはそこを改善する必要があります。いくら記録が大切だからといって、サービス残業により会社が、職員に、甘え続ける方針では良い記録が書けるわけもありません。
残業代をしっかり出している会社であっても、管理者は継続して残業が発生することを、会社は介護職員に甘え続けるわけにはいかないのです。そもそも、残業代を払っているのだから当たり前だという偉そうな姿勢で、御礼すら言わずに残業させたうえで「介護記録」をさせても、介護職員の心に余裕がないのでいい記録にはつながりません。
特に紙媒体による介護記録を行なっているところは注意が必要。終業間近でなければ、誰かが記入している時には後で記入するといった対応が可能です。しかし終業間近においては、先に書いている人がいれば後に書く人の残業が確定します。
業務を減らすなり、遅番を増やすなり、デジタル媒体を導入するなり、何らかの対策が必要になります。現時点において時間内に終わらないのであれば、今やるには早すぎる、無理・無謀な戦術だということ。無理や無謀な業務の詰め込みはデメリットやリスクの方が大きいのです。
「奪うばかり(サービス残業など)なのに、もっとよこせ(良い介護記録)」といってみても、上手くいくはずありません。Aサイズの箱に入る小物Bの最大数が5つなのであれば、無理やり詰め込んでも6つは入らないのです。もっと大きなCサイズの箱を用意するか、もっと小さい小物Dを入れるのか、利口かつ介護職員に優しい対応をした方が、会社の望む結果に近づけることができると思います。
いつ書くのか:タイムスケジュールや業務手順とセットに記載する
介護の現場に存在するタイムスケジュールや業務手順には、なぜか記録というアウトプットの記載がありません。書いてあるのは、食事介助、入浴介助、トイレ介助などの文字ばかりです。なぜかは不明ですが、業務の最初と最後が不明確のままになっているのです。
ケアプランはケアプラン。介護記録は介護記録。まったく別のような扱いがなされています。しかしそれは間違いだと強く、自信を持って発言できます。PDCAサイクルです。ケアプランというPから始まるサイクルなので、Pケアプラン→D介護→C介護記録→Aモニタリング→Pケアプラン更新・改善へと流れを止めてはなりません。
Pケアプランという一利を明確にして、Aモニタリングという一連の流れの区切り、つまりは終わりをハッキリさせておかないと、介護職員は自分の仕事に自信を持てませんし、当然に実行がおろそかになります。
介護記録も同じです。申し送りという始まりが明確にされ、食事介助と介護記録、入浴介助と介護記録、トイレ介助と介護記録といったように、介護記録という介護サービスひとつひとつの終わりとして明確に、タイムスケジュールに記載されていないといけません。どの仕事で完結するのかがわからないからです。
- 申し送り
- 7時~8時 食事介助
- 入浴介助
- 17時半~18時 トイレ介助
上記のようなタイムスケジュールの場合、一日単位の仕事の完結はトイレ介助で終わります。つまり、介護記録はおまけの扱いとして介護職員に認識されます。食事介助や入浴介助の後の介護記録もおろそかになります。
- 7時~8時 食事介助
- 8時~8:20 朝食記録
- 8:20~9:00 トイレ誘導・オムツ交換
- 9:90~9:20 トイレ記録
一方、上記のようなタイムスケジュールならどうでしょう? 新入社員に説明するまでもなく、この会社は介護記録の時間がきっちり設けられており、口だけでなく、介護記録に力を入れた会社だと認識されると思います。「しっかり介護記録しなさい!」と丸投げするだけして、介護記録できる環境づくりを怠っている会社とは違うのです。
もちろんこのようなタイムスケジュール(戦術)を取るには、何らかの業務をカットするといった工夫が必要です。しかし、多少業務を削ったからといって、ケアプラン第1表『居宅(施設)サービス計画書(1)』にある、「利用者および家族の生活に対する意向」に記載される、利用者様一人ひとりの人生の終着駅に導けなくなるなんてことはありません。戦術(ケアプラン第2表)は戦略(ケアプラン第1表)と違って柔軟であるべきです。
こうして「いつ書くのか」を明確にすることで、業務のカットやサービス残業ゼロを実現し、しかも、しっかりとした介護記録をすることが可能となります。ここまでしなければ、ケアプランに活かされる介護記録というゴールには到達できません。
マニュアルを作る
「介護記録」にもマニュアルを作ります。マニュアルをつくれば「介護記録」という業務が、新人などを含めて誰にでも見えるようになります。またマニュアルがあれば、それを「ものさし」のように活用することができます。「介護記録」という業務上の判断基準ができるのです。
判断基準ができれば、ベテランも新人も定期的に「介護記録」を二重にチェックできるようになります。1つ目のチェックはもちろんモニタリング時利用して、より良いケアを目指すため、ケアプランの改善に活用します。
2つ目のチェックは、マニュアルという判断基準と見比べながら、介護記録が理想的な書き方に仕上がっているのか、そもそもマニュアルを改善すべきなのか、そういった話し合いに活かすことが可能になります。つまり、高度な介護職員育成環境を構築できるのです。
口頭で教えてあとは介護職員の努力次第だと丸投げする教育方法はあまりにも酷すぎます。いつでも職員一人ひとりの仕事の反省ができるように、判断基準となるマニュアルの整備と、介護職員一人ひとりの反省時間を設けることで、職員に丸投げのいいかげんな教育から卒業できます。
介護記録マニュアルの一部「ポリシー」と「ルール」をつくる
ポリシーとは方針のこと。介護職員一人ひとりの行動を統治&ルールの基になる抽象的なものです。日本という国を統治する警察のような役割を果たします。しっかりしたポリシーを用意しておくと、職員一人ひとりの行動がより安定します。しかも職員同士の揉め事が減ります。
ルールとは規則のこと。ポリシー(警察)というあいまいな表現を、より具体的に表現した、交通標識のような役割を果たします。
例えば交通ルール。「安全運転」というポリシーを掲げた場合、「制限速度を守る」「黄色信号で止まる」「左折時巻き込みの確認をする」といったルールを設けることで、ポリシーを実現させます。
ポリシー:安全運転
- 制限速度を守る
- 黄色信号で止まる
- 左折時の巻き込みダブル確認
「介護記録」にポリシーとルールを設けるのであれば、「伝わりやすい文章を心がける」「ケアプランの改善に役立てる」などのポリシーを立て、「6W2Hを心がけた文章を書く」「専門用語・略語を使わない」「です・ますで統一する」などをルールとして掲げます。
ポリシー:伝わりやすい文章を心がける
- 6W2Hを心がけた文章を書く
- 利用者様のご家族に読んでもらうことを意識して書く
- 専門用語・略語を使わない
- 単語・言葉・です・ますを統一する
- 客観的に事実だけを書く
- 「事実」と「推測」をしっかり分けて書く
- できる限り裏付け情報を探し記入する
- ポリシー・ルールをチェックリストにして介護記録をする
- 介護記録を改善する分の業務負担は増やさない
ポリシー:ケアプランの改善に役立てる
- 「タイムスケジュール」は業務と介護記録をセットにする
- ポリシー・ルールをチェックリストにして介護職員の育成に努める
- ケアプランと介護記録に番号を記入する
- ケアプランに記録して欲しい内容も記載する
定期的に記録の書き方の育成に努める
ポリシーとルールはそのままチェックリストとして活用することができます。ポリシーとルールをクリアファイルなどに挟みこんで、いつでもどこでも、それを見ながら介護記録ができるようにしておくと、特に新人が助かります。
また、ポリシーとルールが守られた記録がなされているのかチェックを行う担当者を決め、定期的に介護職員の育成に努めると、介護職員一人ひとりの記録力がどんどん上昇します。
「こうしなさい」と偉そうに教えるだけ教えてあとは個々に任せきり。できなければ「あいつはできない」と言いふらすような無責任かつ怠惰な上司&教育者からは卒業です。
定期的に用語の統一化を図る
ポリシーとルールを基に、定期チェックする担当者には、用語の統一化もお願いし、会議などで決定するようにします。
例えば「ケアしました」と「援助しました」などのように人によって使い方の違うもの。「オムツ」と「おむつ」といった単純な単語まで、できる限り統一化を図ることで文章を見やすいものに変えていきます。
アウトプットして欲しい情報はケアマネが説明する
情報が足りておらず、仮説と検証を繰り返し行わなければならないような場合には、介護職員やその管理者に事情を説明して、こういった情報が欲しいと記載したものを手渡し、直接説明しておくことをお勧めします。
出来上がったケアプランを手渡すだけでは伝わらず、欲しい情報を記録してくれません。サービス担当者会議に参加した管理者などが、現場の介護職員にしっかり伝えることができない場合もあります。
よくある伝言ゲームのように誤解したような状態で伝わってしまうこともありますので、直接説明するか、別に自分で記入した文章を渡しておく方が良いでしょう。
ケアプランのサービズ内容に書いてほしい記録内容も記載する
ケアプランに記載するサービス内容には、できる限り一つ一つに「アウトプット」して欲しい内容も記入するようにします。書ききれない場合などは上にご紹介した通り、別の用紙を用意したり、直接説明するなどが必要になるでしょう。
例えばニーズに「安心して外出できる」として、目標に「毎日〇〇公園に散歩に行き(おおよそ1日100歩になる)、顔色、表情、息遣い、足の震え、会話などを記録します」といったように、そのケアをすることで得られる情報の中でも、特に記入して欲しいアウトプットまで、ケアプランに書いておきます。こうすることで欲しい情報も得られるし、介護職員が記録に迷うこともなくなります。
ケアプランの「ニーズ」「目標」「サービズ内容」に番号を振る
ケアマネはケアプランの「ニーズ」「目標」「サービズ内容」それぞれにしっかり番号を割り振っておきます。
介護職員には事情をしっかり説明し、記録する際にケアプランに計画されるケアを行った際には、その記録に番号をしっかり割り振ってもらうようにお願いしましょう。目当ての情報を探しやすくなりますので、情報の取りこぼしを防ぎ、ケアプランの改善にしっかりつなげることができます。