Contents
店員さんが箸を入れ忘れたその時あなたはどう反応する?
あなたがコンビニの店員として働いていると仮定します。おおよそ2,000円分のお弁当と飲み物、お菓子などを購入してくれるお客様A様と、おおよそ500円分のお弁当と飲み物を購入してくれるお客様B様。
その日はとても忙しい日でした。A様が購入する商品を袋に詰め終わり、お箸を入れ忘れたまま手渡してしまったのです。するとA様は怒鳴りました。「手で食えっていうのかよ!」。
別の忙しい日、B様が購入する商品にまたお箸を入れ忘れてしまいました。同じミスをしてしまったのです。B様は怒鳴らず、普通に言ってくださいました。「お箸いただいてもいいですか?」。
ハッとして「大変申し訳ございません!」と謝罪しました。A様に怒鳴られた記憶が蘇り、自分でもびっくりするほど大きな声を出してしまいました。するとB様は言いました。「コンビニって何でも屋みたいだし、昼時はとても忙しそうで大変ですよね。毎日お疲れ様です。」と笑顔で言ってくれたのです。
あなたがお客様だとして、箸を入れ忘れた店員にどう反応しますか?
コンビニでのお買い物は、法的にいうと売買契約。「お客様は神様だ」とは言いますが、本来、契約行為は対等です。店員は商品を引き渡さなければなりませんし、お客様はお金を支払わなければなりません。
箸は支払った金銭に入っているのだとしても、入れ忘れたというミスくらいで怒鳴る理由にはなりません。むしろ、脅しているようにも見えますので、怒鳴ったお客の方が法外な対応に近いといえます。しかし会社の売り上げを考えたら、B様よりA様の方を大切にすべきでしょう。高い買い物をしてくれるからです。
とはいえA様に対する接客は、怒鳴られた後からビクビクすることになるでしょう。仕事とはいえできる限り接客したくないと、拒否したくなります。一方B様への接客は積極的にしたいと思えます。いつも以上に気合を入れてサービスを提供したくなるはずです。店員に売上なんて関係ありません。
お金を支払うという意味でお客様の立場は、企業側、管理者側、リーダー側に似ています。お金をもらうという意味で店員の立場は、介護職員側に似ています。雇用契約と売買契約と名前が異なるだけ。あなたがもし、企業側、管理者側、リーダー側の立ち位置にあるのだとしたら、B様のようになった方が、関係が円滑になります。
店員の接客サービス内容によって変わるお客の反応
コンビニ店員の接客サービスに、何か感じることがありますでしょうか? 元気で明るく丁寧に接客してくれる店員さんと、元気なく、暗い感じで、ぞんざいに接客してくる店員さんといますが、前者の方がいいに決まっています。
それと同じように、もしあなたがヒラの介護職員だとして、企業側、管理者側、リーダー側に対する話し方は、元気で明るく丁寧な方がいいに決まっています。
コンビニで売られている商品の価格に、接客サービスの料金も含まれているとします。その場合、接客サービスが悪いコンビニは、接客サービスも良いコンビニよりも、商品の価格が高いということになります。
買い物する気はなく、コンビニのトイレを借りるために入店、その際店員の接客について比較します。あなたに対して粗末に接してくる店員だと、トイレ後に買い物する気も起りませんが、接客が丁寧だと買い物したほうがいいのではと感じます。
これは介護の現場でも同じ。丁寧に接してくれる職員にはその恩返しをしたくなりますが、感じの悪い職員とはできる限りかかわりあいたくありません。
やる気を奪う管理者やリーダーは「職務怠慢」
お金で心を縛ることはできません。もちろん生活する上でお金はとても大切。100人に聞いて100人が、できる限り多く給与が欲しいというと思います。
しかしだからといって「給与もらっているんだから、その分しっかり働けよ」なんて傲慢に対応されたら誰だってやる気を失います。それが福祉という、命にも関わる介護職であったとしても同じ。人はお金より感情を優先する(お金より感情の方が価値が高い)生き物です。
お金をもらっているのだから働くのが当たり前とか、専業主婦なんだから炊事洗濯するのが当たり前とか、そういった考えや発言、態度をとっていると逆効果。それにもかかわらず、人・金・物・情報を最大限に活用すべき立場にある管理者や、部下を鼓舞し、やる気にさせる立場にあるリーダーが、介護職員一人一人のやる気を奪っているとすれば、それはもう「職務怠慢」といえます。
給与をもらっているのだから黙って働けとか、義務だから働けという前に、我が身を振り返って自分たちこそがしっかり働いた方が恥ずかしくありません。一介護職員であってもそれは同じ。「辞めたら困る癖に」と態度悪く上司に対応して、いいことなんて何もありません。
「情緒的支援者」が評価され、給与を上げてくれる会社もある
あの人といると、なんだか笑顔になれる。やる気になる。認めてくれる。私の考えを尊重してくれる。一緒に喜んでくれる。一緒に悲しんでくれる。仕事の結果より、私の心配をしてくれる。忙しい時でも、家族の心配をしてくれる。
こういったことができ、人にプラスの感情を与えてくれる人を「情緒的支援者」と言います。とてもリーダーに向いた性格の一つです。
ある企業では「情緒的支援者」を評価して給与を上げてくれるシステムを採用しています。仕事の結果だけでなく、性格や他社への対応により給与が上がる仕組み。毎月、職員一人一人に、無記名でのアンケートに答えてもらうことで評価して、給与が上下するのです。
エースでも人のやる気を奪うとマイナス評価で減給
性格や他社への態度によっても給与が上下するこの会社では当然、人のやる気を奪うような発言、態度を繰り返すと減給されるシステムです。
仕事で結果を残すと評価され、給与が上がる部分は他企業と同じ。しかし、エースと呼ばれるほどに高い結果を出せる人であっても、人のやる気を奪いつづけているとマイナス査定され、給与が下がります。
「情緒的支援者」は何倍もの結果を出せる
エースの営業マンが仮に毎月1,000万円分の新規顧客を獲得していたとします。しかし他の営業マンのやる気を奪い、他の営業マン5人の成績がどんどん低下。独り100万円の新規顧客獲得しかできなくなってしまうと、トータルで1,500万円の売り上げです。その後誰か一人でも辞めてしまったら、更にそのチームの成績は下がっていくことになります。
一方1人300万円の新規顧客を獲得できる、笑顔溢れる6人のチームの成績はどうなるでしょうか? 1人で1,000万円稼げるような特別なエースは不在ですが、売り上げは1,800万円。性格の悪いエースのいるチームより、トータルでは好成績なのです。
自分一人の成績がいいからといって、他社にひどい態度で接しているとその分売り上げがマイナスになるのです。そのエースがもし「情緒的支援者」であったなら、1人の成績を100万円から300万円に底上げでき、総合的な売り上げを2,500万円にできる可能性だってあるわけです。
エースよりも「情緒的支援者」を高く評価する会社なら、もっといい成績、もっと質のいい介護を提供できることになります。