親御さんの心身能力の低下、心配ですよね。そんな不安も、親孝行しながら楽しく解決することができます。今回は、家族揃って楽しく『根津美術館』にお出かけするだけで、介護予防までできる一石二鳥な理由を紹介します。
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①目的地まで楽しみを見つけながら歩けば歩行する機能も衰えにくい
年をとると筋力が衰え、足腰が軋み、興味が薄れていきます。そして、無意識のうちに生活圏をどんどん狭めていきます。それは、さらなる筋力の衰えと骨の衰えを生み、悪循環かつ急速な衰えを呼ぶ原因。
お年寄りには外部からの刺激がとても重要なのです。適度に歩くことは心身ともに気分転換になり、脳や骨への刺激につながります。高齢者にとっては、ゆったり楽しく歩いているだけです。
歩行能力の防止、筋力低下の防止になることは当然。そのほかにも、骨への負荷がかかることによる骨粗鬆症の防止。色、風景、におい、空気や雰囲気などの感覚、様々な音、全てが刺激となって、認知症の予防になります。
そこで、できれば家族の方からおねだりするなどして、親御さんの興味をちょくちょく刺激したいところです。
楽しみを見つけながら楽しくお出かけするには、目的地を一つに絞ることが重要です。若く、興味と体力があるうちは、「せっかく出かけるのであればたくさんのものを見て回らないともったいない。」と、多くの予定を入れがち。ですが、お年寄りにとっては、たった一つの場所にお出かけするだけでもう、お腹がいっぱいです。
楽しみを見つける、移動するなど、高齢者にとっては、何もかもがゆったりです。体力や身体能力はもちろん、判断力や理解力も衰えてきているので、早いスピードでは疲れてしまうだけ。十分に楽しめないのです。子供にとって、隣町まで行くだけが「大冒険」であることと同じです。
今回は様々な刺激をもたらしてくれる「根津美術館」。最寄駅は東京メトロ表参道駅。少しにぎやかだけど落ち着いた雰囲気の南青山をゆっくりと歩いて、ワクワクしながら目的地へ向かいます。A5出口から「根津美術館」までは、坂もなく歩きやすいです。
②美しい光景と知的行動は脳への刺激になり認知症を遠ざける
カフェやアクセサリーの専門店、コンサートホールや古美術までが点在する閑静なオフィス街、南青山6丁目。そこに、場違いとも思える和モダンな建物が存在します。それが根津美術館です。
根津美術館は2009年に新創された和風家屋を思わせる大屋根が印象的な建物で、本館は現代日本を代表する建築家隈研吾氏の設計によるものです。門扉から玄関へ続く竹垣のアプローチは、とても瀟洒としていて、まるで異世界に入り込んでしまったかのような錯覚を覚えます。
玄関口を入ると、ちょうど期間限定で展示されていた尾形光琳による国宝「燕子花図屏風」の鑑賞ができました。他にも質の高いコレクションや銅製の灯籠で着飾った綺麗な庭園、時代を遡ったように感じる茶室も自慢です。
庭園はとても広く、もう少し早ければ燕子花(かきつばた)が咲き誇っているのですが、こちらは残念なことに終わっていました。庭園は少し歩きづらいところや傾斜
もありますが、奥の方まで入らなくても充分に楽しめます。ベンチもあるので、ゆっくり自然の景色に触れることができます。
このような風景。年齢なんか関係なく、誰が見ても刺激的です。心が揺さぶられます。体が不自由になるにつれ、生活圏が狭くなっていってしまう高齢者にとって、綺麗な風景はとても刺激的なはずです。
また、高齢者を対象にした研究で「知的活動」が認知症の予防になることが『1月30日号JAMA Neurology』に掲載されました。文章を書いたり、読書したり、博物館や美術館へ行くことも知的活動の一つです。
③介護予防の基本は食事 香りと色と味と食感が脳を刺激し、健康な体の維持と認知症を遠ざける
根津美術館の庭園の中にはカフェがあリ軽食を楽しむことができます。新緑の鮮やかな庭を眺めながら、いつもと違った場所での食事は気分転換にもなります。自宅では食べることのないちょっとおしゃれなメニューに「どんなものがくるのかな?」と想像しながら待つ楽しみ。
今回父は「きのこのパスタ」を頼んでいました。スパゲッティといえばミートソースかナポリタンしか知らないので、ペペロンチーノ風の和風のスパゲッティは珍しかったようです。
外食は食欲が増し、元気もわいてくるので明るい気持ちに。20歳以上も年の離れた娘との外食は、知らない味を知るきっかけになります。これにより得られた知らない味という新しい刺激。次にでかける楽しみに、食事も加わることになります。
食事の場合、いろどり、香り、味覚、歯ごたえ、食事の音、五感すべてを同時に刺激します。五感を同時に刺激しているということは、脳のあらゆる場所を同時に刺激していることと同じ。脳の活性化につながります。
食べ物を食すことによって健康的に、脳も刺激され認知症の予防に。食事が基本であることは、年齢関係なく、誰にとっても共通です。
④外出による人とのふれあいや会話は孤独感の解消と生活圏の拡大へ
外出が楽しいと、また行きたいと思うようになります。年をとると計画性が衰えていきますが、娘が喜んでくれると知った父は若返り、次の計画を話してくれました。例えば、人に聞いたり、行き方を自分で調べるために本を買いに行ったり、自然に出かける機会を増やす努力をしてくれるようになるでしょう。
たくさん歩き回って疲れているはずの父は、なぜか帰りの方が元気で明るく機嫌まで良くて、会話もはずんでいました。「燕子花図屏風は、なかなか簡単にみることができないものなので来て良かった。」「燕子花(かきつばた)がリズミカルに表現されているように見えた。」「3色しか使っていないのにあれだけ表現できるのは素晴らしい。」など、美術なんて詳しくないはずの無口な父が、まるで評論家のように楽しそうに。
身体能力とともに、生活圏が狭くなります。生活圏が狭くなると、家に閉じこもりがちになるということです。生活はパターン化し、刺激が減少していきます。①〜③でも説明したように、刺激がなくなってくると脳を活性化できないということ。認知症への近道となってしまうのです。
娘と触れ合うこと、コミュニケーションをとること。外出するために何かを調べること。外出先で人の声を聞くこと。飲食店や買い物で、店員さんと少しでもお話しすること。これらすべてが刺激です。孤独感は遠ざかり、楽しさやワクワクなどのプラスの感情で満たされれば、認知症や病気からは遠ざかるのです。
プラスの感情をたくさん生むことのできた外出は、次の刺激を求め、他の場所にもいって見たいと思わせます。興味が乏しく、生活圏の狭まってきた高齢者にとってもそれは同じ。「行く前は渋々だったのに、行ってみたらとても喜んではしゃいでしまう。」なんてことも、お年寄りの方でも珍しくありません。
いかがでしたか?今回は、実体験を元に、家族揃って楽しく『根津美術館』にお出かけするだけで、介護予防までできる一石二鳥な理由を紹介しました。これなら、親御さんもその娘であるあなたも苦痛なく、介護予防を続けられます。ぜひ参考にしてみてくださいね。
根津美術館
- 住所
- 〒107-0062 東京都港区南青山6-5-1 03-3400-2536
- 開館時間
- 午前10時~午後5時(入館は4時30分まで)展示室 / ミュージアムショップ /庭園 / NEZUCAFÉ
- 休館日
- 月曜日・展示替期間・年末年始(月曜日が祝日の場合、翌火曜日)
- 入館料
- 特別展:一般:1300円(1100円)
- 特別展:学生【高校生以上】:1000円(800円)
- コレクション展:一般:1100円(900円)
- コレクション展:学生【高校生以上】:800円(600円)
- *( )は20名以上の団体
- *小・中学生以下は無料。
- *受付にて障害者手帳をご呈示いただきますと、ご本人様と同伴者1名様まで、団体料金にてご入館いただけます。
アクセス
- 東川口駅から南北線直通 「日吉」行き 乗車
- 「永田町」で半蔵門線へ乗り換え(ホームまでの移動時間は徒歩約5分)
- 「表参道」下車
- 「A5」出口(階段)から徒歩約8分
※「B3」と「B4」出口にはエレベータ〜があります。「B3」または「B4」出口からの場合徒歩約10分
- 「川口駅」から京浜東北線で「赤羽」まで
- 「赤羽」で埼京線に乗り換え「渋谷」まで
- 「渋谷」で東京メトロ銀座線(浅草行)に乗り換え「表参道」下車
- 「東京駅」から東京メトロ丸ノ内線(荻窪行)で「赤坂見附」まで
- 「赤坂見附」で東京メトロ銀座線(渋谷行)に乗り換え「表参道駅」下車
- 横浜から東急東横線通勤特急(和光市行)で「渋谷」まで
- 「渋谷」で東京メトロ半蔵門線(押上行)に乗り換え「表参道駅」下車