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認知症になってから書く終末期の「意思表明書」は、本人ではなく家族のためのものになってしまう
認知症、もしくは大きな事故や病気を理由に、突然延命措置の判断が必要になる可能性はゼロではありません。そうなる以前から、どのような最期を迎えるか、はっきりしっかり希望しておかなかった場合、ご家族が終末期を決めることになります。
いわゆる「看取り介護」や「看取りケア」、「終末期の意思表示」についてです。親御さんの意思を想像して判断しなければならないので、尊重したものになるかどうかはわかりません。
医師や看護師、介護士さんたちの意見を聞きつつ判断することになるでしょうが、この場合の判断は親御さんの意思を尊重したものというより、ご家族のためのものとなってしまいがちです。
ご家族が一人とは限りません。兄弟姉妹などがいらっしゃる場合、親御さんの終末期のあり方についての意見が分かれ、揉め事に発展してしまうこともあります。
突然死 1989~1993年の東京都内だけで 18,189件
突然死とは、「予期していない突然の病死」のことをいいます。発症から死亡までの時間が24時間以内という医学的定義もあります。
何の前兆もなければ、医師による余命宣告もないので、何の準備も整っていない状態で急に発症します。発症した場所が施設でも、自宅でも、この場合の対応ははっきりしています。救急車を呼ぶことになるでしょう。
心肺と呼吸が停止しているので、救急車到着までの間、心臓マッサージや人工呼吸をします。救急車によって救命救急センターに搬送されると、肋骨が折れるほどに激しい心臓マッサージやカウンターショックなどの「救急救命措置」が行われ命を救われます。
このような突然死が、1989~1993年の5年間の間で、東京都内だけでも18,189件もあったとのこと。決して少ない数ではありません。いつどこで誰がどのような原因で突然死を迎えるのか、誰にも予測できないのです。このような急な状況にあるにもかかわらず、ご家族が「延命措置」をするかどうかを決めなければなりません。
出典:公益財団法人 日本心臓財団ウェブサイト『突然死の現状』ページより
7割が意思表示の書面化(リビング・ウィル)に賛成している
親御さんの意思確認は、いつでもできるわけではありません。認知症や突然死を迎えてからでは遅いのです。不治の病と宣告された後でも、意思表示可能であれば遅くはありませんが、病中にあり体調が悪い時では負担をかけてしまいます。
意思表示できなくなる時は、いつ訪れるのかはっきり予測できないのです。では、意思表示の書面化(リビング・ウィル)について、どれだけの方達が賛成しているのでしょうか。
平成26年、厚生労働省により公表された「人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書」によると、平成25年時点での「意思表示の書面化」作成に対し、69.7%もの一般国民が賛成に丸をつけています。医師は7割以上が賛成、看護師や介護職員は8割を超えます。
平成10年時点での賛成は47.6%、平成15年が59.1%、平成20年が61.9%が賛成しているので、終末期のおける意思表示の必要性が年々知れ渡り、徐々に増加していると考えられます。
出典:「人生の最終段階における医療に関する意識調査」厚生労働省
70%もの賛成者がいるのに、意思表示の書面作成状況はたった3%
厚生労働省の「人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書」によると、約70%の賛成者のうち、実際に書面を作成している方は何と、たったの3.2%しかいないそうです。
高齢者になると、判断力や実行機能などが低下してきますので、「意思表示の書面」などのような段取りが難しくなります。
また、社会から引退している親御さんにとって、日々忙しそうに生活している子供たちには、できる限り迷惑や手間を取らせたくないというのが本音としてあるのではないでしょうか。「意思表示の書面」に賛成していても、内容が内容ですし、忙しい中お願いするのは気がひけるはず。
ご家族や施設側が、終末期のおける段取り、「意思表示の書面化」を行わない限り、作成率が上がることはなく、親御さんの意思を無視した、焦った終末期を迎えることになるのです。もちろん、「延命措置」などについて病院側から問われた時、ご家族自身も困ります。
出典:「人生の最終段階における医療に関する意識調査」厚生労働省
終末期の医療・ケアについての事前意思表明書(リビング・ウィル)のダウンロード
『終末期の医療・ケアについての事前意思表明書(リビング・ウィル)』を書式化し、ダウンロードできるようにしてありますので、ぜひ参考にしてください。
そのまま使ってもらっても構いませんが、ご本人及びご家族の責任で利用することをお願いします。また、意思表明以外でのご利用については禁止します。
ワードなどでご自身でも作成できるので、追加したい部分や削除したい部分があれば、ご自身で作成してみてください。
また、情報量の増加などを理由に、親御さんの気持ちが変化する可能性もありますので、毎年定期的に更新することをお勧めします。
- 気管切開
- 自発呼吸が難しい場合、人工呼吸器使用時などに喉を切ります。
- カウンターショック(電気的除細動)
- 直接電気を流すことで、頻拍性不整脈を正常に戻します。
- 蘇生薬
- 臓器・組織の機能保持を目的として投与される様々な薬。
- 昇圧剤
- 血圧低下時に、一時的に血圧を上昇させることを目的に投与される様々な薬。
- 経鼻チューブ栄養
- 鼻から今でチューブを通し、直接水分や栄養、薬などを投与する方法です。
- 胃ろう
- お腹に穴を開け胃にチューブを通し、直接水分や栄養、薬などを投与する方法です。
- 中心静脈栄養
- 通常の点滴は腕などの末梢(まっしょう)静脈から投与しますが、中心静脈は心臓に近い血管から水分や栄養、薬などを投与する方法です。