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『健康保険傷病手当』とは!? 病気や怪我で4日以上休んだら申請

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介護職は特に、病気や怪我によって仕事ができなくなることが不安ですよね? もともと給与がいい方ではありませんし、病気や怪我をすると働きにくい職業でもあります。

しかし、そのような不安を半減(給与の約2/3支給)してくれる社会保険の制度『健康保険傷病手当』についてご存知でしょうか。今回は『健康保険傷病手当』についてご紹介します。

Contents

健康保険傷病手当とは

『傷病手当』とは、社会保険に加入するご本人が、病気・怪我による休業中に給与の一部を支給することで生活を保障する制度のことです。

支給される傷病手当金は給与の約2/3

1日あたりの金額(勤務月数12ヶ月以上の方) 『12ヶ月間の標準報酬月額の平均額』÷30日×2/3 1日あたりの金額(勤務月数12ヶ月未満の方)

  1. 『勤務期間の標準報酬月額の平均額』÷30日×2/3
  2. 『28万円』
  3. 1か2どちらか少ない方

標準報酬月額とは、健康保険の保険料を計算する際の基準になる表をいいます。協会けんぽでは都道府県別に被保険者の方の健康保険料額を公表しています。健康保険料額を基に、しっかり計算すれば支給される金額がどのくらいか前もって細かい部分まで把握することができますが計算が面倒です。

大体がわかればいいという方は協会けんぽが公表する「傷病手当金支給日額・出産手当金支給日額早見表」が便利です。

傷病手当金4つの支給条件

『傷病手当金』の支給条件は以下4つの条件全てを満たす必要があります。

業務外の事由による病気・怪我の休業

業務外の事由による病気・怪我の休業が条件です。業務上・通勤災害によるものは労災保険の給付対象なので『傷病手当』の対象外。また美容整形なども『傷病手当』の支給対象外。

医師の診断・意見

医師の診断・意見で休業が必要だと判断された方が対象になります。入院は必須条件ではなく自宅療養も対象。

4日以上の休業

病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金):全国健康保険協

条件1つ目と2つ目である、業務外の事由による病気や怪我であって医師の診断による療養のため、仕事を休んだ日から連続して3日間(待期)の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。

そのため業務外の事由による病気や怪我であっても3日間休み、4日目から働いている場合には『傷病手当』の支給はありません。

また、3日間(待期)連続した傷病休暇分に関しては『傷病手当』の支給がないのでこの3日間の休みの種類は問われません。ですから例えば、この3日間の休みに「有給休暇」を当ててもらっても公休扱いでも欠勤扱いでも問題ありません。

4日目以降の休業に傷病手当金の額を超える支払いがない

『傷病手当』は休業中の生活を保障する制度です。そのため4日目以降の休暇中に会社からの給与支払いなどがないことが条件になります。給与支払いがあるのであれば生活が継続できるからです。

また同じ理由で自動車事故などを理由に自賠責保険から支給される「休業損害」からの支払いが得られる場合も『傷病手当金』とは重複できません。

4日目以降の休暇中にもし会社からの給与や「休業損害」からの支給があっても『傷病手当金』に満たない場合にはその差額の支給を受けることは可能です。

傷病手当金の支給期間

病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金):全国健康保険協

『傷病手当金』が支給される期間は支給開始した日から最長1年6ヵ月です。例えば、6ヶ月間の休業後体調が回復して2ヶ月間出勤。しかし同じ病気・怪我を理由に再び1年間休業しても、休業した期間に関しては『傷病手当金』が支給されます。

ただし、最初の休業期間である6ヶ月間と再び休業した10ヶ月間だけが『傷病手当金』の支給対象です。合計1年4ヵ月分。

理由は途中2ヶ月間出勤しているからです。出勤して給与支払いがあった2ヶ月間も最長1年6ヵ月の期間に含まれるのです。

傷病手当金の手続きの流れと申請方法

医師の診断を受けた際に、労務不能期間を確認する

病気・怪我が発生し病院に受診、医師の診断を受けます。その際に確認すべき内容は「労務不能期間」です。「労務不能期間」と医師が診断した場合に『傷病手当金』が支給されるからです。医師に病気だと診断されたからといって、イコール『傷病手当金』の支給対象になるとは限らないので注意。

ですから医師の診断を受けた際にはおおよそで構わないのでしっかり「労務不能期間」を確認しておきましょう。もし「労務不能期間」が4日以上と言われた場合には『傷病手当の申請』をする予定である旨を伝えます。

また「労務不能期間」とは別に、おおよその「治療期間」と「治療費」も確認しておくことをお勧めします。

病院側の傷病手当申請書の手続きについて確認しておく

「労務不能期間」が4日以上と言われた場合には病院の受付などで傷病手当申請書の手続きについてあらかじめ確認しておくと実際にお願いするときに楽です。

会社に報告し、休業中の会社判断を聞く

「労務不能期間」仕事を休まなければならない期間を報告します。手術が必要な場合においてはすぐに「労務不能期間」にならない場合もあります。この場合には決まった手術日までは仕事を続け、手術する日に合わせて休業するといった形になります。

病気や怪我を治す方が先決です。会社の都合に必ずしも合わせる必要はありませんが、ある程度会社都合に合わせられるのであればそのようにすることをお勧めします。

病気や怪我が労災の「休業補償」の対象になる場合も考えられます。労災の「休業補償」が適用される場合『傷病手当』の出る幕がない可能性があります。この場合会社の指示に従って労災手続きをしましょう。

また会社によっては「有休休暇」にしてくれるところもあります。「労務不能期間」の診断、『傷病手当』、労災の「休業補償」、「有休休暇」、その辺を決める必要があります。

『傷病手当申請書』には会社に記入してもらわなければならない部分もありますので「労務不能期間」終了後『傷病手当申請書』に記入してもらえるようあらかじめお願いしておきます。

介護の会社では『傷病手当』があまり知られていないので注意

会社側が行う『傷病手当』の手続きは、多くの場合会社本社や本部で行なっていると思います。人事部であったり総務部であったり。そのため現場で働く介護職員や事務員さん、管理者であっても『傷病手当』がどういうものであるのか知らない場合が少なくありません。

支店・施設単位では『傷病手当』が必要になる機会が少ないので比較的大きな会社の管理者でも知らない場合があるのです。小さい会社ならなおのこと。

その場合「うちの会社では『傷病手当』なんてやってない」とか「就業規則に病気・怪我の場合に給与を補償するなんて書いてない」などと言われる場合もあります。

もしもそのように言われても感情的にならず冷静に『病気や怪我で4日以上の「労務不能期間」を診断された場合に、社会保険に加入している本人であれば誰もが申請できる健康保険制度です』と言えるようにしておきましょう。

会社の就業規則とは関係のない制度であり、社会保険加入者全員が対象の保証制度である旨伝える必要があります。

『傷病手当申請書』を記入する

『傷病手当申請書』は4枚で構成されています。そのうち2枚が本人が記入する用紙になります。記入内容は名前や被保険者番号、振込先指定口座、傷病についてです。

『傷病手当申請書』は「共済組合」の方は「共済組合」のウェブサイトにて、「健康保険組合」の方は「健康保険組合」のウェブサイトにて、「協会けんぽ」の方は「協会けんぽ」のウェブサイトにてダウンロードすることができます。

「労務不能期間」が経過してから病院に『傷病手当申請書』の記入を依頼する

『傷病手当申請書』記入料金は約300円

4枚で構成される『傷病手当申請書』のうち1枚が「療養担当者の意見書」になります。『傷病手当申請書』を先生に記入してもらうには料金がかかります。通常の診断書と異なり保険が適用。料金は300円くらい。

傷病名や初診日、発病または負傷年月日、発病または負傷の原因、労務不能と認めた期間、入院期間、診療実日数などが記入してもらう内容です。

申請する「労務不能期間」前の申請は無効

「労務不能期間」前の申請は無効です。そのため実質、仕事に復帰してから記入してもらうことになります。

1ヶ月以上の「労務不能期間」がある方の場合は1月に1度『傷病手当』の申請をすることになると思います。例えば3月1日から5月31日までが「労務不能期間」とした場合、3月1日〜3月31日分を4月1日以降に、4月1日〜4月30日分を5月1日以降に『傷病手当』の申請を行います。

5月1日〜5月31日分に関しては「労務不能期間」以上に休暇を取っていない限り、仕事に復帰してから記入してもらうことになります。

傷病の状況によっては、痛みや体調不良を押して仕事と『傷病手当申請』をすることになる

傷病状況によっては「労務不能期間」を経過しても万全な状態ではないと思います。その場合痛みや体調不良を押して職場に復帰しなければならないということです。できる限り早く『傷病手当』が欲しい場合には仕事に復帰してから最初の公休に行くことになるでしょう。

少しくらい遅くなっても良いのであれば仕事に復帰してから最初の通院日に、一緒に依頼することになります。

病院によって『傷病手当申請書』の記入に10日くらいかかる

病院によっては『傷病手当申請書』の記入を依頼してから10日前後待たされる場合もあるでしょう。発送してくれるところもあれば取りに行かないとならない病院もあると思います。どちらにしろ完治するまでは痛みや体調不良の中職場に復帰して、やっと休みが来たと思ったら通院しなければならないといった生活を送ることになります。

事前に確認した「労務不能期間」と記入内容が異なる場合は注意

『傷病手当』は基本的に医師が「労務不能期間」と診断された期間にだけ支給されます。そのため実際に会社を休んだ期間より「労務不能期間」の方が短い場合、実際に会社を休んだ一部に関しては『傷病手当』の支給対象にならない可能性があります。

例えば事前に3月1日〜3月20日までが「労務不能期間」と診断。念のため診断書ももらっていたとします。そのため3月1日〜3月20日まで仕事をお休みしました。

しかし『傷病手当申請書』には3月1日〜3月15日までが「労務不能期間」と記載されていたとします。これでは5日分『傷病手当』が支給されない可能性があります。3月1日〜3月15日までとわかっていたら、生活がかかっているので3月16日から仕事をしていたことでしょう。

介護の現場は人材不足。3月15日までの休みでよかったのに5日間多めに休んでいたと会社に誤解されてしまう可能性もあるのです。そうならないためにあらかじめ確認しておいた「労務不能期間」と『傷病手当申請書』に記載される「労務不能期間」はしっかり確認しましょう。この場合には修正をお願いします。

会社に『傷病手当申請書』の記入を依頼する

4枚で構成される『傷病手当申請書』のうち最後の1枚が「事業主記入用」になります。病院のようにそういったことを生業にしているわけではありませんので会社に記入をお願いしてもお金はかかりません。

会社によって『傷病手当申請書』の記入に1ヶ月くらいかかる

病院と違い生業にしているわけではないので、会社によってはなかなか記入してくれないところもあるでしょう。『傷病手当申請書』の記入が初めてといった会社もあるはずです。そのため職場によっては『傷病手当申請書』の記入に1ヶ月くらいかかることもあり得ます。

あまりにも遅い場合には、「傷病休暇中に収入がなく困っているので早めにお願いします」と正直にお願いしておくことをおすすめします。

一緒に添付書類もお願いする

『傷病手当申請書』の初回申請時、または変更が生じた都度「年金証書のコピー」「年金額改定通知書のコピー」「休業補償給付支給決定通知書のコピー」が必要になります。会社に人事部や総務部があるような大きめの会社であれば比較的安心ですが、そうでない場合は記入だけでなく3種の添付書類についてもしっかりお願いしておきましょう。

労災が適用された場合

「休業補償給付支給決定通知書のコピー」は労災が適用された場合にだけ添付します。「休業補償」が『傷病手当』より下回る場合にはその差額が支給されます。

※以前までは初回申請時に「出勤簿(タイムカード)」や「賃金台帳のコピー」も必要でしたが、現在は「年金証書のコピー」「年金額改定通知書のコピー」「休業補償給付支給決定通知書のコピー」の3つのみ。

全国健康保険協会(協会けんぽ)に書類を提出

自分が記入する部分、病院に記入してもらう部分、会社に記入してもらう部分が埋まって、添付書類も揃ったら全国健康保険協会(協会けんぽ)に書類を提出します。都道府県支部は各都道府県にひとつずつありますので、保険証を確認して記載ある都道府県支部に郵送します。

会社によっては「事業主記入用」を記入して添付書類を揃えたらそのまま協会けんぽに発送してくれるところもあります。そのため先に病院に記入してもらい、最後に会社に記入してもらう順序にしてあります。

例外

大きな会社などは健康保険証の種類が会社または同種の事業などで組織された「健康保険組合」の場合もあります。この場合協会けんぽは全く関係ありませんのでご注意を。会社に『傷病手当申請書』の記入を依頼するだけであとは会社が手続きしてくれます。

今からでも遅くない2年の時効

『傷病手当』の申請期限は申請できる日から2年です。もし申請していない『傷病手当』があり、2年以上経過していないのであれば当時の給与のおおよそ2/3が支給されますので、今からでも申請しましょう。

パートやバイトでも社会保険加入者は傷病手当支給の対象

週30時間以上勤務している方など、パートやバイトの方であっても社会保険に加入している方もいらっしゃると思います。社会保険には「共済組合」「健康保険組合」「協会けんぽ」と種類がありますが、3つとも社会保険ですので加入者は全て『傷病手当』の支給対象者。

パートやバイトなど雇用形態は関係ありません。社会保険に加入して保険料を納めている本人であれば『傷病手当申請』をすることができます。『傷病手当』の申請ができない人は国民健康保険の方と社会保険の扶養家族です。

まずは就業規則の確認と有給休暇の申請

有給休暇なら給与の100%いつもの給与日に

「有給休暇」を残しておきたいという方でなければ『傷病手当』より「有給休暇」の申請をお勧めします。

『傷病手当』の場合、傷病休暇中の4日目以降からしか支給されません。また『傷病手当支給額』は給与のおおよそ2/3(厳密には違う)。しかも支給される時期は仕事に復帰してから2〜3ヶ月後になります。

しかし「有給休暇」であれば傷病休暇の初日から給与をもらうことが可能。給与の100%もらえますしいつもの給与振り込み日にもらえますのでかなり助かります。

「労務不能期間」に有給休暇が足りない部分だけ『傷病手当』がもらえる

もし残っている「有給休暇」が「労務不能期間」に足りないのであればその部分だけ『傷病手当』が支給されるので安心です。ただし「有給休暇」により給与をもらった、もしくはもらう予定の「労務不能期間」に重複して『傷病手当』をもらうことはできません。

例えば「労務不能期間」が20日間で、「有給休暇」が10日しかない場合、10日間は「有給休暇」により給与の100%。残り10日間は『傷病手当』により給与のおおよそ2/3だけもらうといった形になります。

10日間は「有給休暇」を使えるから「10日分は「有給休暇」+『傷病手当』両方もらえてラッキー」ということはできません。

就業規則に記載される「有給休暇」の申請規定に注意

注意が必要なのは、就業規則に記載される「有給休暇」の申請規定です。法律では「有給休暇」の申請に対し会社に拒否権はありません。あるのは時季変更権だけ。そのため会社は事業の正常な運営を妨げる場合のみ、希望する「有給休暇」の日の変更ができるだけです。

ですから「有給休暇」の申請自体は問題なく受理されるでしょう。問題になるのは、休業規則に記載される「5日前までに申請しなければいけない」などの規定についてです。

例えば病気や怪我を理由に明日から20日間の「労務不能期間」を医者に診断されたとします。この場合、初日の5日間に関して会社は「有給休暇」を与えなくても良いことになっています。

業務に支障が出ないよう事前申請を合理的に規定する就業規則が認められているからです。融通を利かせて、医者の診断結果のある病気や怪我の場合のみ、当日や5日以内の申請でも「有給休暇」を認めてくれるといった会社の可能性もあります。

融通がきく、もしくは事前申請の規則がないなら3日分だけ「有給休暇」申請するのもあり

全ての「有給休暇」を消費しないとしても、3日間(待期)の部分だけ「有給休暇」の申請をするのも良いと思います。というのも、最初の方でご説明した通り『傷病手当』の支給対象は「労務不能期間」の4日目以降からだからです。最初の3日間は待期であり『傷病手当』の支給がないからです。

交通事故の被害の場合は『傷病手当』の申請はしなくていい

交通事故の被害にあった場合は、『傷病手当』に代わる自賠責保険の「休業損害」から支給

例えば交通事故に巻き込まれたことで怪我をして医師に「労務不能期間」を診断された場合には、治療費や通院交通費、慰謝料の他に「休業損害」をもらえる可能性があります。

治療費や通院交通費、慰謝料、「休業損害」は、社会保険から支給される金銭ではなく自動車所有者が強制加入を義務付けられている「自賠責保険」からの金銭です。

「休業損害」と『傷病手当』は重複請求できない

「自賠責保険」の「休業損害」は、『傷病手当』同様に病気・怪我による休業中に給与の一部を支給することで生活を保障するためにあります。そのため「休業損害」と『傷病手当』は重複請求できません。ただし、「休業損害」と『傷病手当』は細かい部分でルールが異なりますので、上手に両方の保険を活用する必要があります。

「休業損害」は給与の100%×休業期間もらえる可能性

「休業損害」の場合原則1日5,700円です。「それでは『傷病手当』より損しちゃうじゃない」と思うかもしれませんが、1日5,700円以上の収入があることを証明できる資料を添付すれば19,000円を限度に給与の100%もらうことができます。

また「休業損害」の場合『傷病手当』のような3日間の待機期間というものがありません。そのため医師に「労務不能期間」と診断された休業期間全てが対象になる点においても異なります。

「休業損害」はなんと「有給休暇」と重複可能

「休業損害」と『傷病手当』最大の違いは「有給休暇」と重複可能な点にあります。例えば交通事故の被害にあい会社を休んだとします。給与がなくなっては困ってしまうので会社にお願いして「有給休暇」に当ててもらいました。

しかしこの消化した「有給休暇」、被害者にならなければ使われることがなかった「有給休暇」ですよね? 「有給休暇」を失ってしまう損害が生じたのです。

そのため『傷病手当』と違って「休業損害」の場合には「有給休暇」と重複可能になるのです。ただし「有給休暇」を使った場合に支給される「休業損害」は1日5,700円。この場合生活を保障というより「有給休暇」を使わせてしまった補償としては1日5,700円ですといった考え方になるのでしょうか。

「休業損害」の1日5,700円+「有給休暇」の給与100%分をラッキーと考えるか、「休業損害」が5,700円しかもらえないなら損だと考えるかはあなたとその時の状況次第です。

「休業損害」と『傷病手当』両方の請求が必要な場合もある

このように「休業損害」であれば全額補償してもらえるので『傷病手当』の申請をしなくても良い場合があります。ただし「休業損害」の金額が『傷病手当』以下の場合には『傷病手当』も申請しましょう。差額分だけ『傷病手当』の支給があります。

また、「労務不能期間」経過後に仕事復帰したけどやっぱりダメで、再度医師に「労務不能期間」の診断を受けた場合など様々な理由で「休業損害」が打ち切られてしまうこともあります。この場合においても、最大1年6ヶ月間、過去2年に遡って請求できる『傷病手当』の手続きが必要になるでしょう。

始めの診断で「治療期間」と「治療費」も確認する

「労務不能期間」とは別に、おおよその「治療期間」と「治療費」も確認しておくことをお勧めします。「労務不能期間」と「治療期間」が同じ期間である場合はほとんどありません。おおよその「治療期間」を知っておけば、仕事に復帰したあとどのくらいの頻度でどのくらいの期間通院しなければならないのかあらかじめ把握しておくことができます。

またあらかじめ「治療費」がわかっていれば金額によっては一時的に支払いすることなく、「高額療養費」の制度を活用することができます。話が逸れてしまうので軽い説明だけにとどめておきますが、標準報酬月額26万円以下の方であれば同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額は57,600円です。

そのため例えば、同一月に117,600円の医療費を支払った場合あとから申請することで50,000円が払い戻しされます。しかし事前に約11万円の医療費がかかることがわかっていれば、あらかじめ協会けんぽなどに「限度額適用認定証」をお願いしておくことで57,600円以上の支払いをしなくて済むのです。

「限度額適用認定証」がない場合は一時的に117,600円を支払い、後から50,000円が払い戻し。「限度額適用認定証」がある場合、提示すれば57,600円以上の支払いはしなくて良いといった形になります。

働けるようになってから支給までに2〜3ヶ月かかるから貯金があった方が良い

介護のお仕事をしている以上、不可能ではありませんが貯金することはとても難しいことだと思います。しかしもしものことを考えたら最低でも20万円の貯金はしておきたいところです。

例えば末締め次月の25日給与支払いの会社に勤めていたとします。ある時3月1日〜3月31日まで医師に「労務不能期間」との診断されてしまったのです。2月分の給与は3月25日に振り込まれるので安心。しかし4月25日には3月分の給与がまるまる振り込まれないのです。

3月1日〜3月31日までの「労務不能期間」経過後、職場に復帰した4月1日の仕事帰り、早速病院に行き『傷病手当申請書』の記入をお願いします。すると記入には2週間かかると言われました。2週間後病院に『傷病手当申請書』を取りに行き、会社にも記入をお願いします。するとやはり2週間くらいかかると言われました。『傷病手当申請書』が出来上がるのは4月の月末頃です。

4月の月末、会社から記入してもらった『傷病手当申請書』を受け取りすぐに協会けんぽに発送しました。申請後、振込は10営業日とされていますが10営業日以上かかる場合もあります。

結局『傷病手当』が振り込まれたのは5月25日だったとします。振り込まれた金額は1ヶ月の給与のおおよそ2/3。ここでは13万円とします。4月はしっかり働いているので、5月25日には4月分の給与である20万円+『傷病手当』13万円、合計33万円が入金されていることになります。

3月25日に振り込まれた20万円のうち約10万円は入院費用とその関連費として使ってしまいました。残り半分、10万円で4月1日〜5月25日まで、おおよそ2ヶ月間やりくりしなければならないのです。

約20万円の貯金があれば30万円で約2ヶ月の間やりくりすれば良いことになります。介護職員にとって『傷病手当』は必須ですが、『傷病手当』だけでは不安が残ります。

親の介護の前に必須! 実家 親の持ち家の価値を知っておこう

親の介護の期間が長くなればなるほど重くのしかかってくるのが費用の問題。

最初は親孝行の意を込めて快く費用を負担できても、長生きすればどんどん金額が積み上がっていくのが現実。

自分たちの生活もあるので、親の介護費用を援助し続けるには限界があります。

そのため、親の介護費用は基本的にまず親の財産を使っていくことが、お互いのため。

だからこそ、すぐに売る売らないは別にして、
あなたの実家・親の持ち家の価値を知っておく(一度、査定をしておく)ことで、介護費用にあてられる金銭の目処が立ちます。

実家終いノート編集部
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  • この記事を書いた人

孝行(たかゆき)

40代男性。有料老人ホーム、訪問介護、グループホームに勤務経験があり介護の現場に詳しい。主任やユニットリーダー兼計画作成担当者も経験。介護事業新規立ち上げ手伝い中。旧サイト名「フィリアル(親孝行)」部分の記事を主に執筆。

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