足腰が弱ってきても、行かなければならない場所も、行きたい場所もあります。しかし高齢者になると、ちょくちょく休憩を挟まなければなりませんし、長距離の移動が出来なくなります。
かがむのも大変で、靴を脱いだり履いたりももたついてしまいます。トイレが近くなったり、立ったり座ったりするだけで、尿漏れをしてしまうこともあります。
恥ずかしくて「トイレに行きたい。」ってなんども言い出しづらく、出かけたいのに「出かけたくない。」って言ってしまうこともあるでしょう。
そこで今回は、高齢者にオススメできる公共施設に最低限必要なバリアフリーなどの設備を14種類ご紹介したいと思います。
非日常でも日常でも、利用する公共施設選びの参考や、お出かけ前の調査に活用してもらえたらと思います。
ここでご紹介するバリアフリーなどの設備は、足腰が弱ってきた方、比較的元気な方向けの設備です。車いすを利用されている方や目の不自由な方に必要なバリアフリー設備は含めておりません。
出入口
中心となる出入り口に段差がない もしくは 出入り口にスロープがある
高齢者になると誰もが足腰弱くなってきます。足をずって歩く「すり足」気味になってきているので、たった5mmの段差ですらつまずいてしまうこともあります。
そのため最低でも施設の入り口だけでも、段差(バリア)が取り除かれていることが理想的。段差があるのなら、スロープが用意されていると安心です。
中心となる出入り口が自動ドア
施設のドアは、家庭のドアに比べて重くなりがちです。店内が外から見えるように、ガラス素材を採用しているだけでなく、サイズが大きいからです。
大きめの施設においては、手で開けるタイプのドアの多くが「開き戸」。筋力が低下している高齢者が、重たいドアを押すことはとても大変です。
引いて開ける場合は、押すよりも更に危険。一歩か二歩、ドアを掴みながら下がらなければ開けることができないからです。
そのため、高齢者にとっての理想的なドアの閉開放式は「開き戸」ではなく、「引き戸」が良いのです。しかし、大きいサイズでガラス張りの「引き戸」を見たことがありません。
自動ドアであれば、高齢者自身がドアを自分で開け閉めする必要がありませんので安心です。買い物してものを持っていても、シルバーカーを押していても、難なく施設への出入りが可能です。
出入り口付近にインフォメーションがある
スーパーや百貨店、医療機関や福祉施設、宿泊施設など、大きめの施設に出入りするのであれば、出入り口付近に「インフォメーション」が用意されていることが理想的です。
若い頃のように、歩きながら目的地を探したりの行き当たりばったりなお出かけがむずかしくなっているからです。500m歩く都度、休憩を挟むくらいに考えておく方が無難です。
「無駄」のある移動というのは、「贅沢」な移動方法です。「体力」や「筋力」に余裕があるうちだけ。
「体力」や「筋力」に余裕がなくなり、続けて歩くことのできる距離が短くなってきている高齢者にとっては、「贅沢」な移動ができなくなっているのです。
その点、出入り口付近に「インフォメーション」が用意されている施設であれば、できる限り無駄のない移動ができますので、疲れすぎて歩くことができなくなったり、「二度と行きたくない。」なんて思われずにすみます。
エレベーター
一般のエレベーターがある
2階以上ある高い施設を利用する場合には、「一般のエレベーター」があると安心です。大きめの施設であれば、階段にはもちろん手すりが用意されています。
しかし、一般家庭の高さ良い高いので、1階上がるだけでもかなりの段数を上がらなければなりません。階段の途中で動けなくなってしまったら大変です。
エスカレーターであっても、タイミングを合わせることが難しく、反射神経も衰えてきている高齢者にとっては、ゆったりゆっくり2階以上へ移動できる「エレベーター」の方が安全です。
まだまだスラスラ歩くことができ、自然にエスカレーターに乗ることができるほどに元気な方であれば、階段やエスカレーターの方が、介護予防にもなって良いかと思います。
エスカレーター
一般のエスカレーターがある
まだまだ元気な高齢者で、「エスカレーター」に乗る際に全く躊躇がない方であれば、必ずしもエレベーターに乗る必要はありません。むしろ、「エスカレーター」や階段を選ぶ方が、体の衰え防止にもなります。
駐車場
一般の駐車場がある
車で移動するのであれば、施設内に「駐車場」が用意されている方が安心です。コインパークの多くは、まだバリアフリーに対応していません。坂になっていたり、ストッパーなども危険。
駐車場事前精算機がある
若い人であっても、精算機にぴったり横付けして、腕だけ出して清算できる人は、多いのでしょうか少ないのでしょうか。
後ろから見ていると、ドアを開けて、もしくはドアから出て、清算している若い人は少なくないように思えます。
65歳以上の親御さんを持つ40代以上の方の運転ならどうでしょう。65歳以上の運転ならなお、清算が難しいかと思います。
後ろに並ばれてしまったら、清算を焦ってしまうこともあるかもしれません。また、お出かけは楽しいですが疲れます。
そんな疲れている状態の時に、うまく清算できないとイライラしてしまうこともあるでしょう。ですから、「駐車場事前精算機」が用意されている方が安心です。
トイレ
一般のトイレがある
利用する予定の施設内、もしくはその近くにトイレがあることを確認しておくと安心です。高齢者になると、本当にトイレが近くなります。
正常な方であれば、日中のトイレの回数はおおよそ4〜6回。2時間半から3時間おきにトイレを使っている計算になります。
「頻尿」の方の場合は、日中のトイレの回数は8回以上です。1時間から2時間おきにトイレに行かなければならないのです。
かなり頻尿の方であれば、10分おきにトイレを使っている方もいらっしゃるくらい。ですから、トイレの場所はしっかり把握しておく必要があります。
自分から言いだすことを恥ずかしいと思っている方もいます。ですから、自分がトイレに行きたくなかったとしても、1時間おきに「私トイレに行くけど、お母さんどうする?」なんて気遣った声かけも必要になるかもしれません。
その他
所々にベンチや椅子が用意されている
大きい公共施設の管内の所々。徒歩で移動中の、道の至る所に、ベンチや椅子が用意されているととても安心して外出ができます。
というのも、何度かご説明してきた通り、高齢者になると「筋力」も「体力」もかなり低下しているからです。
人によって異なりますが、500m歩く都度休憩している方も少なくないのです。公共施設選びにおいては、動線上にベンチや椅子が用意されているかどうかはとても重要です。
長い間座ることができないほどに、ベンチや椅子が用意されていない場所では、高齢者の身体状況に合わせ、シルバーカーなどを利用して、椅子の代わりとなるものが必要になる場合もあります。
ATMがある
念のため、利用する予定の施設内に「ATM」があるのかどうか確認しておくと安心。施設内にないのであれば、コンビニなどの近所にあるかどうか確認しておくと色々スムーズです。
コインロッカーがある
旅行中であれば、手荷物が邪魔になることもあります。また、行ったり来たりする余裕のない高齢者の場合、欲しいもの購入するため、後で戻るなんてことも難しいかと思います。
「コインロッカー」があれば、その都度利用して、手荷物を減らしつつ安全に快適なお買い物が可能となります。
冷蔵ロッカーがある
コインロッカーと同じ理由ですが、元気な方であれば、冷蔵が必要な製品を後で購入することができます。
冷やす必要のないものを先に購入して、戻って冷蔵製品を購入するのです。しかし行ったり来たりしていると、余計に疲れてしまいます。
そんなとき、「冷蔵ロッカー」があると、歩行距離を少なくすることができます。要冷蔵製品を購入してから、買い忘れたものを思い出したときや食事をしてから帰るなどの対応も可能になります。
郵便ポストがある
買い物ついでに、手紙やハガキを投函したいこともあるかと思います。「郵便ポスト」がどこにあるのか、把握しておいて損はありません。
公衆電話がある
高齢者は、スマホや携帯電話の利用に慣れていません。使いこなしている高齢者もいらっしゃいますが、なんとか電話を受けることだけができるという方も少なくないでしょう。
持ってはいても、充電する癖がなかったり、持ち歩く癖のない方もいます。親御さんと一緒にお出かけする場合には、電話に関する心配ないでしょう。
しかし高齢者だけのお出かけであれば、把握してもらって損はありません。もしものこともありますので、「公衆電話」がどこにあるのか、教えておいて損はありません。
非日常はもちろん、日常であればなおのこと把握しておくと安心
高齢者だけで、または娘・息子であるあなたと一緒であっても、旅行などの非日常で、最低限欲しいバリアフリーなどの設備を把握しておくととても安心で安全です。
慣れていない場所である非日常だからこそ、備えがあった方が安心・安全なのです。自信をなくしてしまわれないためにも、大げさなことではありません。
もしもですが、「トイレ」の場所を把握していなかったがために、たった5分トイレに到着するのが遅れ、汚してしまうかもしれないのです。
こんなことがあったら、漏らしてしまった本人は自信をなくしてしまい「迷惑かけてしまうからもう旅行にはいかない。」なんて言われてしまうかもしれないのです。
こうなってしまったら、身体機能がが急激に衰えて行くこと間違いなしです。
日常生活で利用する使い慣れた場所であっても同じです。年を重ねれば重ねるほど、本人が感じている以上に身体機能が衰えています。
使い慣れていると油断しますので、非日常より事故が多くなる可能性もあります。そのためできれば、最低限欲しいバリアフリーなど設備の整った施設に変更したり、改めて把握しておくなどの対応も必要になります。