三井住友銀行のリバースモーゲージの特徴
2015年に三井住友銀行はじめとして3大メガバンクがこぞってリバースモーゲージの取り扱いを始めました。
生存中は返済義務がなく、借主(配偶者)がなくなったあとに自宅の売却によって返済を行うリバースモーゲージですが、三井住友銀行のリバースモーゲージにはどのような特徴があるのでしょうか?
まずは、三井住友銀行のリバースモーゲージの概要や特徴を解説していきます。
商品概要
申込条件:60歳以上で安定継続した収入のある人(年金収入可)
融資限度額:1,000万円以上2億円以内
金利:2.975%(変動金利)
返済方法:借主が亡くなったあとに自宅を売却して返済、利息は毎月10日に借入元本に加算
極度内貸付方式
三井住友銀行のリバースモーゲージは担保評価額に応じた極度枠を作成し、契約後はその限度額の範囲内で自由にお金を借りることができる「極度内貸付」という方法で融資が行われます。
カードローンのように、限度額の範囲内で自由にお金を借りることができるため、「年金収入だけでは老後の生活費が足りない」という場合には毎月少しずつお金を借りることができます。
また、「自宅のリフォーム」「有料老人ホームの入居資金」「子供の結婚資金」などのまとまった使い道をする場合には、まとまったお金を引き出すことができます。
みずほ銀行のリバースモーゲージなどでは、使い道によって融資コースが分かれており、金利も異なりますが、三井住友銀行は特定のまとまった使い道にも、毎月少しずつ借りていく使い道にも1つのコースで対応可能です。
担保評価額の120%まで極度枠設定可能
三井住友銀行のリバースモーゲージは担保評価額の120%以内で極度枠を設定することができます。
例えば評価額1億円の自宅を担保にする場合には1億2,000万円までの枠を設定することができます。
なお、リバースモーゲージに申込を行うと三井住友銀行が自宅を評価し、そこから極度枠が決定するという流れになります。
担保評価額の100%以内までしか極度枠を設定できないというローンもある中で三井住友銀行は担保評価額に対する設定額が大きいと言うことができます。
推定相続人全員の同意が必要
リバースモーゲージは借主が亡くなった後に担保となっている自宅を銀行が売却して融資金の返済に充てるローンです。
このため、借主死亡時に相続人がリバースモーゲージをしたことを知らないと、トラブルになることが少なくありません。
筆者も高齢の方に本人の意向で保険を売ったところ、数年後に親族から「年寄りを騙した」とあらぬクレームを受けたことがあります。
高齢者に金融商品を販売したり、お金を貸す際にはこのような親族からクレームがつきものです。
三井住友銀行も借主死亡後のトラブルを防止するため、融資実行前に推定相続人全員から同意書の提出を受ける必要があります。
そのため、お子様の中で1人でもリバースモーゲージの利用に反対している人がいる場合には、三井住友銀行からリバースモーゲージでお金を借りることはできません。
三井住友銀行へ申し込みをする前に、推定相続人全員にリバースモーゲージを利用しようとしていることを話し、理解を得ておいた方がよいでしょう。
三井住友銀行リバースモーゲージのメリット
三井住友銀行のリバースモーゲージには他の銀行のリバースモーゲージと比較して多くのメリットがあります。
使い道が自由でも、使い道が決まっている場合と同じ低金利で融資を受けることができるなどのメリットがあります。
配偶者が亡くなっても安心
リバースモーゲージは借主が死亡したら自宅を売却して返済に充てるローンですので、借主である夫が亡くなった時に奥さんが生存していた場合には、奥さんは住む家を失ってしまうリスクがあります。
このようなことがないように、三井住友銀行のリバースモーゲージでは、配偶者を連帯債務者として、仮に借主の方が先に亡くなったとしても配偶者が生存している間は担保となっている自宅に住み続けることができる仕組みになっています。
借主である配偶者が亡くなっても、残された人は安心して老後を過ごすことができます。
金利が低い
三井住友銀行のリバースモーゲーは金利が2%台と比較的低く設定されています。
しかし、それ以上に大きなメリットは、使い道が特定されていなくても、使い道が決まっていても同じ金利で融資を受けることができるという点です。
例えば、みずほ銀行のリバースモーゲージでは使い道が自由なフリー口と、使い道が決まったものだけに使用できる目的口に分かれていますが、目的口の方が金利が低くなっています。
この点、三井住友銀行はどのような用途でも金利は同じく低いため、生活費の補填などに毎月少しずつお金を借りたいという人には金利のメリットがあります。
年に1回訪問してくれる
三井住友銀行のリバースモーゲージを借りると、年に1回三井住友銀行の銀行員が訪問してくれます。
高齢になると、リバースモーゲージを借りていることを忘れてしまうことも考えられますし、最も怖いのは、親族や第3者に騙されてお金を引き出されるということです。
このようなことがないように、定期的に銀行員が訪問し、現状の確認を行ってくれます。
リバースモーゲージは高齢者専用のローンだからこそ、高齢者はトラブルに見舞われるリスクが高くなります。
三井住友銀行は銀行員の訪問によってトラブル防止を図ってくれるのです。
生存中は返済の必要なし
リバースモーゲージは生存中は返済義務がないローンですが、三井住友銀行のリバースモーゲージは利息の支払いもありません。
毎月の利息は元金に加算されていきます。
リバースモーゲージの中には利息だけの支払義務がある商品もありますので、利息の支払いがないというのは三井住友銀行リバースモーゲージのメリットと言えるでしょう。
関西地方も対応
三井住友銀行は関西に自宅を構える人も対応しています。
関西では大阪・京都・兵庫が対応可能です。
さらに中部地方では愛知県も対応しています。
リバースモーゲージや不動産担保ローンの多くが東京と近郊県しか対応していないことが多いため、関西や愛知も対応しているというのは三井住友銀行リバースモーゲージのメリットです。
不動産の売却以外にも返済方法を選択できる
リバースモーゲージは借主死亡後に自宅を売却することによって返済するのが基本です。
しかし、三井住友銀行のリバースモーゲージは現金での一括返済も行うことができます。
生存中にまとまったお金が手元にない場合にリバースモーゲージでお金を借りておき、その後まとまったお金が入ったあとに返済することも可能ですし、また、借主死亡後であっても相続人が現金で返済して親が住んでいた自宅を残すということも可能です。
不動産価格は変動するものですので、借主死亡時に不動産価格が融資残高よりも上昇している場合には現金で返済するというような選択肢も相続人には残されていることになります。
借入可能額が年齢に応じて設定できる
リバースモーゲージは設定された極度枠の100%までお金を借りることができるわけではありません。
利息が元金に上乗せされるため、将来的に加算される利息分も加味して極度枠の一定範囲内までしか借りることができないのです。
このため、みずほ銀行のリバースモーゲージなどでは極度枠の50%までしか借りることができません。
しかし、高齢になれば、将来的に上乗せされる利息も少なくなることが予想できます。
このため、三井住友銀行のリバースモーゲージでは、借主の契約時の年齢によって極度枠に対して借りることができる金額が決まります。
借入時の年齢が若ければ借入額は少なくなりますが、高齢であれば多くの金額を借りることができます。
通常、ローンというものは高齢になればなるほど借りることができる金額が少なくなるものですが、三井住友銀行のリバースモーゲージではこの逆になりますので、特徴的であると同時にメリットでもあります。
三井住友銀行が認めれば借主と配偶者以外も居住できることもある
リバースモーゲージは借主と配偶者が亡くなった後は自宅は処分されるのが原則ですので、子供などの夫婦以外の人が居住している自宅を担保として利用することはできません。
しかし、三井住友銀行のリバースモーゲージは融資実行後に借主夫婦以外の人が居住した場合には、届け出を行い、三井住友銀行が担保処分に支障をきたさないと判断した場合のみ、借主夫婦以外の人でも居住することができます。
原則的には禁止ですが、例外的に認められることもあるという程度に認識しておきましょう。
三井住友銀行リバースモーゲージのデメリット
他の銀行のリバースモーゲージと比較してメリットの多い三井住友銀行のリバースモーゲージですが、申込可能な年齢が高いなどのデメリットもあります。
メリット同時にデメリットもよく理解して活用しましょう。
60歳にならないと利用できない
三井住友銀行リバースモーゲージ利用することができるのは60歳以上です。
他の銀行のリバースモーゲージでは55歳以上から利用できるという商品が少なくありませんので、退職を控えて、別荘を購入するなどという用途や、最も子供の学費にお金がかかる50代にリバースモーゲージを利用してまとまったお金を借りるなどということには使用することができません。
また、リバースモーゲージを使用して、50代のうちにお金を借りておき、退職金で全額清算するという人も少なくありませんが、このような用途にも三井住友銀行のリバースモーゲージを使用することは不可能です。
活用できるのは高額の都市部の物件だけ
三井住友銀行のリバースモーゲージに利用することができる物件は東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県の一戸建てだけです。
また、評価額6,000万円以上の物件だけです。
他の銀行のリバースモーゲージと比較して対象地域が広いとは言えますが、地方の人は利用することはできませんし、評価額6,000万円以上というのも、一般的な所得の人にとってはハードルが高いと言えます。
三井住友銀行のリバースモーゲージは都市部の資産家のためだけのローンという側面があります。
金利情勢によっては利息負担が大きくなる
三井住友銀行のリバースモーゲージは変動金利です。
このため、将来的には金利が上昇するリスクがあります。
歴史的な低金利水準の現在は低い水準でリバースモーゲージの金利は推移していますが、長生きした場合には借入期間が30年以上になることもあるため、今後数十年先には金利が上昇する可能性があると言えます。
金利が急激に上昇した場合には、毎月元金に加算される利息負担も大きくなり、あっという間に利息分だけで極度枠を使い切ってしまう可能性があります。
リバースモーゲージという借入期間が長期化するローンで変動金利というのはデメリットと言えるでしょう。