介護環境と介護の仕事を理解する

高齢者や介護職員の幸福度を高める『3択の自由』の心理学

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自分の言ったことに責任を持とうとする「一貫性の原理」

人はみな、自分の発言、行動、態度に一貫性を保とうとする心理が働きます。例えば、温泉が大好きな利用者様。その方が昔、よく温泉旅行をしていたとします。そこで、「〇〇さんは、温泉がお好きでしたよね」と質問します。すると、「温泉は大好きで、よく旅館に宿泊したんだよ。」と回答してくださいました。この話の流れで、「お風呂の準備ができました」と言われると、「今日はお風呂いいよ」と拒否しづらくなるのです。

「一貫性の原理」は、介護職員に対しても同様にうまく活用することができます。人の目に触れる機会が少ないような場所、例えば、ベランダなどが汚れていたとします。そこで、「ご自宅のベランダなどの管理ってどうなされていますか? 汚れたまま放置していますか? それとも定期的に掃除されていますか?」と聞いてみます。「年に1度くらいは掃除します」などと回答してくれるでしょうか。

「もし時間があるとしたら、ご自宅のベランダ、どのように管理して、どのように活用したいと思います?」と聞いて、理想を言ってくれたとします。その話の流れのまま「なるほど、興味あります。会社のベランダもそうしたいと思うのですが、どうしたら良いと思いますか?」といいながらそのまま一緒にベランダに向かい、いつの間にかベランダを掃除する流れになっている状況をつくりだすのです。

この方法であれば、急に「ベランダの掃除をしてください」とお願いするよりも手伝ってくれる気持ちに傾いてくれます。自分の発言に責任を持とうと、どのように管理したら良いか、一緒に考えてくれる可能性が高いのです。お話の流れからして、「忙しいので無理です」とはなかなか言えません。

一貫性を保とうとする心理は、周りにたくさん人がいればいるほど強く働きます。たくさんの人の前で発言してしまうことで、たくさんの人に「うそつき」だと思われてしまうことを無意識に防ごうとするのです。

自分の選択は正しかったと自分自身で説得してくれる「認知不協和の解消」

例えば、あなたが高価なディオールの化粧品を購入したとします。プラスなレビューを見ると「うんうん、そうだよね」と嬉しくなります。逆にマイナスなレビューを見ると「自分に合わなかったからって悪いことしか書いていない」って怒りたくなります。良いと思ったからこそ購入したのに、それにケチをつけられると、不快に感じて「自己正当化」するのです。

喫煙や飲酒を否定される方々が、「それでも長生きしている人はいる」と言うような場合も同様。不快感を排除する発言をするのです。自分の決断や選択が誤っていたことを認めたくないからです。そのため自分で選択した方が「自分の選択は正しかった」と、自分自身に言い聞かせてくれるので、長続きしたり、やる気になったりしてくれます。

自分で選べる自由に幸福度が高まる

自分で選択した時の方が幸福度が高いという、学者の研究結果があります。自己選択の自由を、他人によって脅かされると、自由を回復するために反発したいという心理が働くのです。

「勉強しなさい」と母に言われると、急にやる気をなくしてしまう経験ありますよね? 先輩や上司に「言われたことだけやれ」なんて言われた場合はどうでしょう?

利用者様に対する発言も同様。「今は食事の時間です」「危険なので禁止です」などと、自己選択の自由を奪うような発言は、相手にストレスを与えるだけ。自分の発言がどんなに正論であったとしても、選択の自由を奪ってはうまくいかないのです。できる限り選択肢を設けて、自己選択の自由を奪わない方法を選ぶ方が、人間関係はとてもスムーズで、相手に幸福感を感じてもらえます。

3択がオススメ

利用者様や介護職員に、様々な選択をしてもらう上でオススメしたい方法は、あらかじめ3つの選択肢を用意する方法です。

世の中には様々な3択があります。「S・M・L」「松・竹・梅」「特上・上・並」などが良い例でしょうか。「S・M・L」のポテトの量、「松・竹・梅」の部屋の質、「特上・上・並」のお寿司の価値、決めているのは全てお店側。しかし消費者は、自分で選択していると錯覚し幸福感を感じるのです。

3つの選択肢があれば、その中から自分にとって最も納得できるものを選ぶことができるからです。2択の場合、どちらの方が良いかといったような、ネガティブな選び方に傾きがちなので、3択の方がオススメ。

4択以上となると、迷ったり混乱したりするので選ぶのが面倒になります。自由すぎる(多すぎる選択支)と人はなぜか、ストレスを感じてしまうのです。

例えば「この施設をどうしていきたいのか、あなたの選択にお任せします」と言われたら困るのではないでしょうか?利用者様に、「1時間レクの時間がありますがどうしたいですか?」と聞いて、即座に答えることができる方は少ないはずです。そのため、利用者様や介護職員に選択してもらうとしたら、3択がベストです。

「今は食事の時間です」と制限するよりも、「食事と、食器洗いの手伝いと、お掃除、どれを選んでも構いませんよ。〇〇様の自由です」と笑顔で伝えたりすると、「じゃあ食事で」と選んでくれたりします。もしも食器洗いやお掃除を選んだとしても、自立支援になるので何の問題もありません。

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実家終いノート編集部
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  • この記事を書いた人

孝行(たかゆき)

40代男性。有料老人ホーム、訪問介護、グループホームに勤務経験があり介護の現場に詳しい。主任やユニットリーダー兼計画作成担当者も経験。介護事業新規立ち上げ手伝い中。旧サイト名「フィリアル(親孝行)」部分の記事を主に執筆。

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