認知症にはいくつかの種類があります。ここでは、認知症の種類別割合とそれぞれの原因や症状についてご紹介します。
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認知症の種類別割合
認知症を発症した場合、種類として圧倒的に多いのが『アルツハイマー型認知症』になります。研究結果によると、全体の約68%を締めています。
次いで多いのが『脳血管性認知症』で約20%。『アルツハイマー型認知症』と『脳血管性認知症』だけで、全体の88%になります。
出典:厚生労働科学研究費補助金認知症対策総合研究事業「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」平成23年度~平成24年度 総合研究報告書
アルツハイマー型認知症(AD)
日本で圧倒的に多い認知症が『アルツハイマー型認知症』になります。男性より女性の方が明らかに発症率が高く、「総合研究報告書」によると約70%が女性になります。
原因は脳内の老廃物(特殊なタンパク質)といわれています。この老廃物が脳内に蓄積し、脳の働きを阻害。脳を萎縮(衰えて、しなびて、縮む)させているというのです。
初期症状は、何度も同じことを言ったり、直前のことを忘れたりします。緩やかに進行していくので、「時間」だけだったものが「場所」も、「時間」「場所」だけだったものが「人」もわからないほどに、脳が萎縮します。
中期の症状としては、家に帰ることができなくなったり、料理など段取りが必要な行為ができなくなります。
最終的には、家族の顔もわからなくなり、会話や排泄行為なども一切できなくなり、寝たきりになります。
脳血管性認知症(VaD)
日本で2番目に多い認知症が『脳血管性認知症』になります。男性より女性の方が少し発症率が高く、「総合研究報告書」によると約57%が女性になります。
原因は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害。脳血管障害では、脳の血管が破れたり詰まったりしますので、後遺症として認知症になってしまうのです。
初期症状は、頭痛やめまい、手足のしびれなど。言葉が出てこなかったり、物の使い方がわからなくなったりもします。
とても判断しやすそうに感じる初期症状ですが、1日の間でも、よくなったり、悪くなったり、できたり、できなかったりするので、脳血管障害になり救急車で運ばれてからでないと気がつかない場合も少なくありません。
脳血管の損傷により障害を受けるのは、記憶を司る部分だけとは限りません。そのため、言語障害や片麻痺などの後遺症も残る場合もあります。
レビー小体型認知症(DLB)
日本で3番目に多い認知症が『レビー小体型認知症』になります。やはり男性より女性の方が発症率が高く、「総合研究報告書」によると約81%が女性になります。
原因は脳内にレビー小体と呼ばれる特殊なタンパク質が脳細胞を破壊するすることで発症。特殊なタンパク質が原因という点においては『アルツハイマー型認知症』と似ています。
初期症状は、幻聴や幻視。いないはずの人が見えたり、ないはずのものが見えたり、聞こえない音が聞こえたりします。
手足の震えや関節の曲げ伸ばしがしにくくなる「パーキンソン症状」が出ることもあります。中期になると「パーキンソン症状」が悪化してくるので、転びやすくなるなど、歩行が困難になります。
後期には、歩行することができなくなり車椅子。常に介護が必要な状態になります。食べ物を上手に飲み込むことができなくなったりもしてくるので、食事中にも注意が必要になります。
前頭側頭型認知症(FTD)
日本では発症率の少ない認知症『前頭側頭型認知症』。その名の通り、脳の前頭葉と側頭葉が萎縮することで発症する認知症です。
前頭葉は感情・理性・思考・運動・創造を、側頭葉は聴覚、嗅覚、情緒、感情を司る脳です。原因は、脳内のあるタンパク質が変異することで発症するといわれています。
感情や理性を司る部分が萎縮する病気なので、初期症状は、意欲の低下や感情が乏しくなったりします。また、好きな食べ物が変わったり、本能のままに行動するようになります。
そのため、暴力や痴漢などをすることもあります。中期には、同じ行動を繰り返したり、人の感情が理解できなくなったり、人の行動を真似したりします。
運動を司る脳でもありますので、後期には、筋力の低下や筋萎縮と、意欲との相乗効果で、自分で体を動かすこともできなくなります。
アルコール性認知症(Alcohol)
日本では発症率の少ない認知症『アルコール性認知症』。その名の通り、原因はアルコールですが、『脳血管性認知症』の症状とは変わりありません。
アルコールを多量に飲み続けることで、脳が委縮したり、脳血管障害を引き起こしたりするために、アルコール依存症と同じような症状も現れます。
アルツハイマー型やレビー小体型の認知症と合併することもありますが、この場合の治療はとても大変です。
正常圧水頭症(NPH)
日本では発症率の少ない認知症『正常圧水頭症』。他の認知症は一度発症すると、現状治ることはありませんが、『正常圧水頭症』は手術をすると治る可能性があります。
原因は、本来自然に吸収されるはずの脳脊髄液が、吸収されることなく留まってしまうこと。くも膜下出血や髄膜炎の後に発症することもあります。
症状は、がに股歩きのように、足が開き、歩幅が狭く、すり足で歩く歩行障害。集中力や注意力が散漫になり、意欲が低下したりもします。また、尿失禁などの障害も発生します。