
実の子供が頼まれていたとしても、売買ができない可能性が高いことは知っていましたか?
親が認知症になると、その程度によりますが介護が必要になってきますよね。
たとえば要介護3になると、ひとり暮らしは現実的にきびしいので、どの施設で面倒をみてもらうのかの話になります。
要介護3以上で入所できる施設に「特別養護老人ホーム(特養)」があります。
ところが、公的な介護施設のため利用料が比較的低額ということで人気があり、施設によっては100人以上の入所待ちが発生している場合があるんです…
一方、民間の同様な施設として挙げられる「介護付き有料老人ホーム(老人ホーム)」は、要介護1~5の認定度合いと、受けたい介護サービス・生活の場の内容によって、利用料が大きく変わります。
つまり、特養の入所を待つにせよ、どの有料老人ホームを選ぶか、あるいは他の介護施設を利用するかにせよ、お金を多く持っていた方が選択肢が広がるというのが事実。
また、たとえ入所したい良い介護施設があっても、払えるお金が足りなければ、あきらめざるを得ないという残酷な真実もある訳です。
その介護費用、親の貯蓄で支払える状態にありますか?
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介護費用は親の貯蓄で支払える状態にありますか?
親自身の貯金がある程度あって、それですべてまかなえるのが理想なのですが、そのようなケースは必ずしも多くはありません。
かと言って子世代が全面的に負担するというのは、基本的には避けたいところ。
独身ならまだしも、自分の家庭を持っていたら、その生活費を大きく削ることになります。
これが原因で子世代の夫婦関係が不和になるなんてことはよく聞く話。
そもそも、自分たち家族の生活費がギリギリで、親の介護費用なんてとてもじゃないが払えないというケースが今は多いです。
正直、ウチだってそうです。
介護が必要になった高齢の親を持つと、介護費用どうするかに、非常に頭を悩ませることになります。
親の介護費用をまかなうための方法のひとつ
そんな時に使える手段のひとつとして頭に入れておきたいのが、
「親が持つ家を売却してその費用を介護施設の入居費用にあてる」
という選択肢です。
もちろん、あなたにとっての実家ですから思い出もあるかと思います。
親も自分の家がなくなるということに悲しい思いもするでしょう。
しかし認知症になると、進行は遅らせることが出来ても元のように回復することは見込めません。つまり親が持つ我が家の記憶も実際とは異なったものになっていきます。
施設に移って最初の頃は「家に帰りたい」という発言もあるかも知れませんが、しばらくすると落ち着いてきます。
そもそも帰ってもひとりでは生活できないわけですから、結局は施設が今後の住まい・自分の家だと思ってもらうしかないんですよね。
そうしていかないと、僕ら子供世代が自分の生活を守れなくもなります。
これを「ドライだ・冷たい」と思う方もいるでしょう。
でも、親は我が子が自分(親)のことで苦しむことを喜ぶでしょうか。子供に負担をかけたくないと思うのが親の気持ちなのは、自分が我が子を持つと分かりますよね。
それに、家という「物」に固執するより、施設に入居した親の元へちょこちょこ顔を出して話をしたり聞いたりする「心」を大切にしたほうが、本当の意味での親孝行になるのではないでしょうか。
認知症になってから家を売るのはハードルが高くなる
ただ、親が認知症になった場合、その親が所有している家や不動産は、頼まれていたとしても実の子供でも売買ができなくなる可能性がとても高いことは知っていましたか?
認知症と診断されてしまうと、法律上は「意思能力」に欠ける状態とされるからです。
親も含めて話し合いが済んでいて、子世代の兄弟姉妹の中で介護と家のことを一任されている人がいたとしても、その人でも通常の手続きで親の不動産を売買することはできません。
親と兄弟から任されている・委任されているというだけでは不充分です。
親が認知症になっている場合、委任自体が「意思能力」に欠けた状態で行われたという扱いになってしまうからです。
民法上、認知症を患った人は「判断能力のない者」として扱われてしまう可能性があります。
そして判断能力がない人の契約行為などは全て、無効になってしまう可能性があります。
法律行為にはもちろん、相続対策も含まれるため認知症の方が行う相続対策等も無効として扱われます。
もし、不動産を売った時点ですでに認知症だったことが後から判明した場合、売買契約が無効になり、仲介した不動産会社や登記した司法書士がその責任を問われることにもなってきます。
ですので、当然、所有者が認知症の物件では不動産会社は仲介に入りたがりません。
それではどうしたらよいのか?
・成年後見制度を使う
という、法的に認められたステップを踏むことが基本となります。
しかし、この成年後見の認定を受けるには、かなりの時間と手間がかかるんですよね。
ところが、認知症になる前であれば、親自身が不動産の売買をすることで自身の介護費用を捻出できます。
また近年、成年後見制度の使い勝手の悪さから、子供が親の財産処理をサポートできる家族信託という制度も生み出されましたが、活用はまだまだこれからです。

家族信託と後見制度
●家族信託
・財産の売買や運用が可能
・初期費用は高いが、その後の費用負担は少ない
・遺言のような効果を付けることが可能
●後見制度
・基本的に財産の売買や運用が不可能
・初期費用は少ないが、相続発生まで月数万円のランニングコストが発生する
・遺言のような効果は無い— 橘慶太@円満相続税理士法人の代表 (@enman_souzoku) December 27, 2021
※ツイッターの規約に基づいて引用しております。こちらの税理士さんは当サイトに関与はしておりません。
各制度の詳しい解説は別ページでしていきますが、
まず1点ここで必ず覚えておく必要がある重要なことは、
「どんな制度を使うにせよ、親が認知症になる前の元気なうちに、親の家・不動産をどうするか、親子で話し合って前もって方向性をある程度決めておくことが得策」ということです。

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親の家・不動産の価値を知らないと始まらない
親の家をどうするか、親子で話し合うためには、まずその家の価値(売買査定金額)が今いくらぐらいになるのか把握しておくことがスタート点です。
その金額で、介護施設の費用を完全にまかなえるのか、それでもまだ不足が多少あるのか。その辺が前もって分かれば対策は立てられますし、親が要介護状態や認知症になって介護施設に入所することになっても、金銭面であわてずに済むんですよね。
金銭面さえクリアできていれば、自分の家族の生活費を大きく脅かすことはなくなります。
祖母が施設へ。家はどうしたらいいかを元気なうちに考えておいた方がいい理由
突然独居老人となった祖母は、しばらく自分の家で過ごしてから施設へ入所しました。
祖母は戸建て一軒家(亡くなった息子名義)に住んでいたので、施設へ入ったら家はどうしたらいいのか?という問題が出てきます。
祖母のケースでは誰も住む予定はなかったので、売る一択でした。(こんなときは手続きが楽な賃貸がよかった…と感じました)
そのうち誰々が住むからしばらくそのままだったり、借家にするなど、それぞれのご家庭で事情は異なると思います。
住んでいる家をどうするかは、本人が元気だとちょっと話しにくいこともあるかもしれませんが、後のことを考えると絶対に考えておいた方がいいですよ。
家をどうするか、元気なうちに考えておいた方がいい理由
結論:家をどうするか早く考えておいた方がいい理由は、手続きがいろいろとややこしくなるからです。
本人が元気で生きているのと、死んでからでは必要な手続きや書類が変わってきます。
祖母は認知症があったので、死ぬまで独居できるかもしれないというのは全く想定しておらず。
環境が変わることもあって確実に認知症が進むだろうから、いずれ施設になるだろうとわたしと介護士の親戚とで話していました。
まだ家族が住んでいるし…と後回しにせず、施設へ入る前にいろいろ確認しておいた方がいいことがありますよ。
家の権利について
まず、家は誰が所有しているのかはっきりさせておきましょう。
祖母の家は叔父の名義で叔父は独身だったので、祖母が相続ということになり叔父→祖母に名義変更が必要でした。
簡単にできる携帯なんかの契約とは違って、家となると戸籍とかいろいろ絡んでくるんですよね。
経験されたことがある方はご存じかと思うのですが、住んでいたところの市役所を辿るやつめちゃくちゃめんどくさいですよね。
祖母の場合海外に住んでいたことがあり、祖母が亡くなってからだと市役所辿りが海外まで及ぶことに。
なんとしても生きている間に片付けたい。
また認知症が進むと本人であっても断られることがあります。相続の手続きで依頼した司法書士に断られました。
2人目の司法書士の方はOKを頂きお世話になりましたよ。
名義変更など本人が必要な手続きは元気なうちにやっておくのが一番です。
高くは売れませんでしたが、祖母の生きているうちに片付きました。
しばらく空き家で置いておく方もおられますが、固定資産税がかかるのと、庭木や雑草の手入れなどメンテナンスが必要な場合もあるので手間なども考えないとですね。
親の介護の期間が長くなればなるほど重くのしかかってくるのが費用の問題。
最初は親孝行の意を込めて快く費用を負担できても、長生きすればどんどん金額が積み上がっていくのが現実。
自分たちの生活もあるので、親の介護費用を援助し続けるには限界があります。
そのため、親の介護費用は基本的にまず親の財産を使っていくことが、お互いのため。
だからこそ、すぐに売る売らないは別にして、
あなたの実家・親の持ち家の価値を知っておく(一度、査定をしておく)ことで、介護費用にあてられる金銭の目処が立ちます。

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早めに対策を考えておけば、転ばぬ先のつえとなりますよ。